ルーカスと呪われた遊園地(上)

大森かおり

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5 ドキドキ観覧車

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 それで急に恥ずかしくなった柚子は、途中で鼻歌をやめ、笑ってごまかした。
(そんなふうに言われると、なんか歌いづらいわね……)
「あれ、もう歌わないんですか?」
 久遠が残念そうに言った。
「いや……」
 もう歌う気がなくなった柚子は、久遠になんて答えようか迷い、道から視線をはずした。
 その時、突然、目の前の視界が、グラッと揺れたのがわかった。
「わっ」
 柚子は思わず声を上げた。
 気づくと、坂の道から足を踏みはずしていた。
(まずい、落ちる……)
 落下を覚悟し、柚子は目をつむった。
 すると、まるでバンジージャンプをするように、一瞬、胸が浮いた気がした。柚子は体を大の字にし、道から放り出されるように空中に舞った。
「柚子さん!」
 久遠が大声で叫びながら、とっさに手を伸ばした。
 その声に反応するように目を開くと、柚子も思い切り手を伸ばした。
 それから二人の手は上手くからみ、久遠が離れないように、力強く柚子の手をつかんだ。
「大丈夫ですか?」
 焦った顔の久遠が言った。
「は、はい……」
 間一髪、柚子は久遠に助けられ、下に落ちることをまぬがれた。
「危なかったですね」
 額に汗をかきながら、苦笑した久遠が言った。
「ですね……」
 助けてもらった申し訳なさから、柚子は声を小さくしながら言った。
 ふと下を見ると、柚子たちは、地上からとても高い位置まで登ってきていたことがわかった。
 ここから落ちていたら、ひとたまりもなかっただろうと思うと、柚子は身ぶるいした。
 そしてすぐに久遠に手を引っ張られ、柚子は再び坂の道にもどった。そしてそのあとすぐに、柚子も久遠も、同時に地面に座りこむと、一時、放心状態になった。
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