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4 妹の決断
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柚子は制服のまま、ベッドの上に寝転んでいた。
家の外には、相変わらず報道陣がいて、帰る時も、なんとか押しのけて、家に入ってきたくらい、すごいことになっていた。それに、ニュースも一日中流れ続けているため、スマホの連絡も鳴り止まない。
でも、柚子がいま気になるのは、そのことではなくて、
『僕と一緒に、廃墟の遊園地に行きませんか?』と、コンビニの帰りぎわ、久遠に誘われたことだった。
別にいかなければいいだけの話なのだが、どうしても考えてしまう。
久遠さんは、自分たちがいきさえすれば、姉と京一を助けられるとでも、思っているのだろうか。
確実ななにかがあれば、柚子も少しはいく気になるけれど、なにもないのであれば、柚子も久遠も、あの二人と一緒に、共倒れするだけだ。
でも、このまま待ち続けていて、二人が無事に帰ってくることなんて、これから本当に、あるのだろうか。警察ですら踏み入れられない場所なのに。
いや、やはりどう考えても、二人が戻ってくることは、ないも同然だ。
柚子は徐々に、久遠の誘いを受けようか、迷い始めていた。
あと、柚子にはどうしても、心に引っかかることがあった。もしこのまま、京一が一生戻らないのであれば、柚子は自分の思いを、永遠に、京一に告げることができなくなってしまう、ということだった。それだけは、絶対にあってほしくない。たとえ、自分が危険な目にあったとしても、京一に思いを告げられないことの方が、柚子にとっては、ずっといやなことだった。
それに、もしかしたら久遠さんだって、なにも言わないだけで、廃墟の遊園地から出られる策が、なにかあるのかもしれない。
「うーん」
柚子はうなりながら、どうするか迷った。
いけば必ず、なんらかの危険な目にあい、これまでの人たちと同じように、もう二度と、ここへは戻ってこられないかもしれない。でもそのかわり、姉たちを助けることができるかもしれないし、京一くんに、自分の思いを伝えることだってできる。柚子はあらためて、その二つを、心の中で天秤にかけた。
家の外には、相変わらず報道陣がいて、帰る時も、なんとか押しのけて、家に入ってきたくらい、すごいことになっていた。それに、ニュースも一日中流れ続けているため、スマホの連絡も鳴り止まない。
でも、柚子がいま気になるのは、そのことではなくて、
『僕と一緒に、廃墟の遊園地に行きませんか?』と、コンビニの帰りぎわ、久遠に誘われたことだった。
別にいかなければいいだけの話なのだが、どうしても考えてしまう。
久遠さんは、自分たちがいきさえすれば、姉と京一を助けられるとでも、思っているのだろうか。
確実ななにかがあれば、柚子も少しはいく気になるけれど、なにもないのであれば、柚子も久遠も、あの二人と一緒に、共倒れするだけだ。
でも、このまま待ち続けていて、二人が無事に帰ってくることなんて、これから本当に、あるのだろうか。警察ですら踏み入れられない場所なのに。
いや、やはりどう考えても、二人が戻ってくることは、ないも同然だ。
柚子は徐々に、久遠の誘いを受けようか、迷い始めていた。
あと、柚子にはどうしても、心に引っかかることがあった。もしこのまま、京一が一生戻らないのであれば、柚子は自分の思いを、永遠に、京一に告げることができなくなってしまう、ということだった。それだけは、絶対にあってほしくない。たとえ、自分が危険な目にあったとしても、京一に思いを告げられないことの方が、柚子にとっては、ずっといやなことだった。
それに、もしかしたら久遠さんだって、なにも言わないだけで、廃墟の遊園地から出られる策が、なにかあるのかもしれない。
「うーん」
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いけば必ず、なんらかの危険な目にあい、これまでの人たちと同じように、もう二度と、ここへは戻ってこられないかもしれない。でもそのかわり、姉たちを助けることができるかもしれないし、京一くんに、自分の思いを伝えることだってできる。柚子はあらためて、その二つを、心の中で天秤にかけた。
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