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4 妹の決断

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 そんな乙葉を見ると、
「ふふふ、引っかかったー」と、ルーカスがおどけて言った。
「えっ?」
 予想外のことを言われ、乙葉はとっさに、ルーカスを見た。
「京一はさっき、北にいったばかりなんだから、こっちにいるわけないでしょ。これじゃ、京一のこと意識してるのが、バレバレだよ」
 せせら笑いながら、ルーカスが言った。
「ルーカス、私のこと、からかったのね」
 怒りながら乙葉が言った。
 この時、乙葉はムダな心配をして、損した気分になっていた。
「だって、乙葉が京一のこと好きだって、なかなか認めないんだもん。ジンクスのことも、京一が好きだから、聞いたんでしょ?」
 絶対そうだと言わんばかりに、ルーカスが聞いた。
「さっきも言ったけど、私は純粋に、ジンクスに興味があるのであって、あの人、京一には、なんの興味もないんだからね?」
 乙葉はルーカスに言い聞かせるように、そう言った。
「あー、はいはい。わかりました。そういうことにしとくよー」
 適当にルーカスが返事をした。
「絶対わかってないじゃない」
 乙葉が不満を口にした。
 ルーカスが今後、京一によけいなことを言わないか、乙葉は急に不安に思った。
「もう、そんなこといいから、早く鍵を探しに行こう。じゃないと、遊んであげないからね」
 すると、ルーカスは焦った顔になって、
「えーっ、そんなのいやだ。ちゃんと鍵を探すから、あとで遊んでよ?」と言った。
「ちゃんと探したら、ね」
 乙葉がそう言うと、ルーカスはすぐに、東に向かって、探しに行きはじめた。
「さて、私も探しますか」
 誰もいなくなった場所で、乙葉は呟いた。そしてルーカスに続き、乙葉も西に向かって、歩を進めた。

                 ♢♢♢
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