ルーカスと呪われた遊園地（上）

４ 妹の決断

３６

　話しかけられた柚子は、店員の内田に会釈えしゃくした。
　内田は、柚子の顔をしっかりと見ると、
「やっぱり！　幼なじみの子だよね」と言った。
「はい、そうですけど……」
　内田の勢いに、少々圧倒されながら、柚子が言った。
「ニュース見たよ。京一くん、あの廃墟の遊園地にいるんだってね」
　興奮した様子で、内田が言った。
　柚子はすでに学校で、何度もそういった言葉を聞いていたために、
「みたいですね」と、うんざりした顔でそう言った。
　すると内田は、頭に血が上って、そのまま倒れてしまうのではないかと思うくらい、白熱しながら、
「最初見た時は、僕、本当にびっくりしちゃって、その時飲んでいたコーヒーを、思わず吹き出しちゃったんだよ」と話した。
「でも、やっぱり京一くんらしいなって思った。だって仮病とかじゃなくて、女の子助けに行っちゃうんだもん」
　続けて、まるで京一がヒーローとでもいうような、大げさな言い方をしながら、内田が言った。
「あの、実はその女の子って、私の姉なんです」
　柚子が、遠慮がちに言った。
「えっ？　君のお姉さんだったの？」
　内田が、驚いたように問いかけた。
「そうです」
　少し恥ずかしく思いながら、柚子が言った。
「ええ、そうだったんだ。それは大変だったね」
　内田は、気の毒そうな顔をした。
「君のお姉さん、行方不明になる前に、このコンビニにきていたんだよ。だからかな、昼間にこのコンビニにも、報道陣の人がきていたよ。僕、生まれてはじめて、インタビューに答えたんだけどね、もしかしたら、夕方のニュースとかに出るかもしれないな」
　うれしそうに、内田がそう言った。
　しかし、すぐに我にかえったようになって、
「あ、ごめん。不謹慎だったよね」と謝った。
「いえ、別に大丈夫です」
　視線を下にやりながら、柚子が言った。
「なんにせよ、はやく見つかるといいね。その、君のお姉さんも、京一くんも」