ルーカスと呪われた遊園地（上）

４ 妹の決断

３３

「さあね」
　そう言うと、ルーカスは天井付近まで飛んでいき、あくびをしながら、大きく伸びをした。
　乙葉は早速、京一を探そうと思い、立ち上がって扉まで向かった。すると途中で、テーブルの上になにかが置いてあるのが見えた。
「まあルーカス、見て。ここに、魚の缶詰とごはんがあるわ」
　乙葉が言った。
　その言葉を聞いたルーカスは、近くまでくると、
「二人分ある！　てことは、ひとつは僕の分だね」と、うれしそうに言った。
「京一が私たちのために、朝ごはんを用意してくれたのかもしれないわね——といっても、もう昼すぎだから、朝ごはんと呼べるのかわからないけど」
　昼に起きてしまったことを後悔しながら、乙葉が言った。
「乙葉、食べようよ」
　ルーカスがうながした。
「でも京一が——」
「京一なら、あとで探しにいけばいいじゃん。僕これ食べたいし」
　ルーカスは乙葉の言葉をさえぎって、せかした。
　乙葉は少し迷ったが、お腹がすいていたため、
「わかったわ。じゃあ食べましょう」と言った。
「わーい」
　乙葉とルーカスは椅子にすわると、テーブルに置かれてあった缶詰一個と、白いごはんを食べはじめた。
　ルーカスは食べ物に夢中なのか、もくもくと食べている。
　乙葉はというと、朝食を食べながら、ぼんやりと、今日見たあの夢のことをかんがえていた。
　いまでも思い出すだけで、鳥肌が立つくらいおそろしい。あのピエロは知らぬ間に、乙葉の心に、強烈な印象を残していた。
　よく考えると、あのピエロは昨夜、倉庫で見たピエロにそっくりだった。つまりは、あの時から夢で見るくらい、トラウマになってしまったということだろうか。乙葉は夢で見て、あらためてそう感じた。
「乙葉、おいしいね」
　もぐもぐ食べながら、ルーカスが言った。