ルーカスと呪われた遊園地(上)

大森かおり

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4 妹の決断

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「何か居心地が悪くて、眠れないわ……」
 いくらか時間が経った後、乙葉は眠ろうと目を瞑ったはいいが、目が冴えて眠れなかった。倉庫の中が埃っぽくて、ジメジメしているせいもあるが、何より、真っ暗で何があるかわからない、不気味な空間にいることが、乙葉の恐怖心を刺激して、より眠れなくさせた。
 そんな空間に、とうとう耐えられなくなった乙葉は、パーカーのポケットからスマホを取り出した。スマホを開くと、充電が残り少ない十パーセントになっていた。簡易充電器で充電をしたいと思ったが、その肝心な物は、ルーカスたちがいる小屋の中に、置きっ放しだ。
 乙葉は仕方なく、わずかな充電を頼りにして、暇つぶしにと、データフォルダにある画像を見ることにした。画像なら電波がなくても見られるから、いい気分転換になる。そう思ってデータフォルダを開くと、最初に現れたのは、学校の教室で撮った、友達との写真だった。
 いつも一緒にいる二人の友達、結衣ゆい莉子りこと、ピースをしながら笑っている写真が、何枚かあった。微笑みながらスクロールをして見ていると、突如、思い切り変な顔をしている写真が出てきた。それを見て、乙葉は思わず吹き出した。
「そう言えば、この間、こんな写真も撮ったわね」
 ついこの前のことなのに、乙葉には、随分昔に撮った写真のように思えた。
「あ、これ」
 乙葉が見つけたのは、クラスメイトの久遠が、皆の写真に偶然、写り込んでいる写真だった。
「たしか、この時は三人で写真を撮っていて、その時、たまたま久遠くんが通りがかって、うっかり写っちゃったのよね。写真は消さないでいいって言っていたから取ってあるけど、本当、懐かしいわ。あ、でも、この写真は、ちゃんと四人で写ってる」
 次の写真の久遠は、
「僕はいいですよー」とか何とか言っていたが、結衣と莉子が、
「まあまあ」と言いながら、半ば強引に連れてきて、一緒に撮った写真だった。
 二人は、三人だけで撮っているのに飽きたから、久遠を誘ったのだとか言っていた。
 乙葉は、そんな二人の突拍子もない行動に呆れながらも、ふだん仲のいい久遠と一緒に写真が撮れることを、嬉しく思っていた。
 よく見ると、写真の中にいる当の久遠は照れているのか、カメラ目線ではなく、明後日の方向を見ていた。
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