ルーカスと呪われた遊園地（上）

４ 妹の決断

１３

「お父さん、おそかったね」
　柚子が言った。
「ああ、残業が長引いたんだ……それより、ライン見たよ。乙葉、この近くの山の頂上にいるかもしれないんだって？　あの廃墟の遊園地に」
　ソファにかばんを置いて、父も母のとなりにどっしりと座った。
「そうなのよ。ねえ、あなた、ここで待っているだけだとよけいに不安になるだけだし、これから私たちだけで、乙葉を探しにいかない？」
　母が父にそう提案した。
「私このままだと、乙葉が心配で、今夜も眠れそうにないもの」
「いや、だめだ。あそこは危険すぎる。警察にまかせよう」
　無慈悲むじひにも、父が断言した。
「まかせるって……まかせても、中まではすぐに探しにいってくれないじゃない」
　怒っているのか、母はだんだんと、語気をあらげはじめた。
「あなたは乙葉が心配じゃないの？」
「心配に決まっているだろう」
　険しい顔で父が言った。
「でも、お前だって知っているはずだ。あそこに入って、無事に帰ってこられた者は、一人もいないんだ。警察ですら入ることを躊躇ちゅうちょしていると言うのに、俺たちがいってどうにかなる問題じゃないんだ」
「そんな……」
　母が困惑した表情で言った。
「残念だが、そうするしかほかに方法がない」
　父が、あきらめるようにそう言った。
　柚子は、乙葉のことはもちろん心配だったが、父のいうことは正しいと思った。警察ですら入れない場所に、家族でいったところで、解決するような話ではないことは、中学生の柚子でもわかった。
「ところで、さっき京一くんのお母さんに会ったよ。なんでも、京一くんも、行方がわからなくなっているそうじゃないか」
　ふいに父が言った。