ルーカスと呪われた遊園地(上)

大森かおり

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4 妹の決断

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「なんで、そんな危険なところに入っちゃったの?」
「本当よね。お母さんもわからないけど」
 困ったように母が言った。
「ほら、その場所って、前から事件が多かったじゃない? 柚子はあの時まだ小さかったから、覚えているかわからないけど、昔よくニュースで、あそこは一度入ったら、誰も外には出られない場所だって、報道されていたの。最初は、そんなのあるわけないじゃない、ってバカにしながら見ていたんだけど、お母さんの友達にもね、“山の上にある廃墟の遊園地”に、肝試しかなにかで、何人かが悪戯で入ったことがあったのよ。でも、その友達はみんな、ニュースの報道通り、誰一人として街にもどってはこなかった。その時、冗談なんかじゃなかったんだって、お母さん確信したわよ。なにせ、身近で起こったことだったからね」
 その時、柚子は母のいっていることを信じられないような目で見て、話をだまって聞いていた。
「だから警察の人たちも、中々頂上までは行けないらしいの。乙葉ったら、本当にどうしちゃったのかしら。昔からあそこには近づいたらいけないって、何度も口うるさく言っておいたのに」
 そう言うと、母は苦痛な表情をした。
「そう……なんだか、大変なことになっちゃったみたいね……」
 柚子は呟くように言った。
 山の上の廃墟の遊園地。そこに姉はいる。
 そんな危険な場所に行くなんて、姉は本当に、どうかしてしまったのかもしれない。
「まあとにかく、お母さん、そんなに心配しなくても、お姉ちゃんならきっと無事よ。だってあの人、悪運だけは、誰にも負けないくらい強いじゃない。だから大丈夫よ」
 母を励ましたい一心で、柚子が言った。
「そうだといいけどね」
 そういう母は、いまだに乙葉のことを、心配しているように見えた。
 それも無理はない。母は子供のことを第一に考える人だから。柚子はそんな母を不憫ふびんに思った。
 その時、再び、玄関のドアが開く音がした。どうやら、これまで仕事に行っていた父が、ようやく帰ってきたようだった。
 それからまもなくすると、
「ただいまー」と、ネクタイをゆるめている父が、リビングに入ってきた。
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