ルーカスと呪われた遊園地（上）

４ 妹の決断

１

　姉の乙葉が行方不明になってから、一日が経過した。
　乙葉とはいまだ、連絡ひとつとれていない。母は乙葉が心配でたまらないようで、昨夜は、一睡もしていないのだという。それに父の方も、ろくに眠れてはいないようだった。
　二人ともきっと、大事な娘が、事故や事件などにまき込まれているのではないかと、気が気ではないのだ。柚子はそんな両親を見て、はやく乙葉がもどってきてほしいと、心の中でただ祈るばかりだった。
　警察は、乙葉のスマホの解析かいせきや、乙葉が歩いたと思われる、道の周辺に住む人から、情報収集を進めたりして、捜索そうさくを開始しているらしい。しかし、まだ手がかりがなにもないのか、いまのところ連絡はこない。
　姉は一体、どこでなにをしているのだろうか。家出、かけ落ち、はたまた誘拐ゆうかいか。だけど、これまでの乙葉は、家出をするほど、家族に不満を持っているようには見えなかった。それに、かけ落ちをするような相手がいる、なんて話も、これまで一度だって聞いたことがない。だとしたら、やはり誘拐なのだろうか。柚子はそう考えると、身ぶるいした。
「ただいまー」
　学校から帰ってきた柚子は、玄関で靴を脱ぎながら、そう言った。
　しかし、なぜか待っても返事がない。
　いつもなら母が、
「おかえりー」と、リビングから元気にいってくるはずなのに。
　なんだかおかしいと思いながら、柚子はリビングに入った。
　そして入って早々、目に入ったのは、テーブルにひじをつきながら、うなだれている母の姿だった。
「ただいま」
「ああ、柚子。おかえり」
　母は柚子をいちべつすると、再びうなだれた。
　母の顔は、一瞬しか見えなかったが、目の下にはクマがあり、朝に見たときよりも、やつれているように見えた。