ルーカスと呪われた遊園地（上）

３ メリーゴーランド

３０

　その途端、メリーゴーランドは、通常の五倍の速さでまわりはじめた。京一はその様子を見ようともせず、操作室の中を見るのに、夢中のようだった。
「キャー！」
　乙葉はさけび声をあげた。そして馬から振りおとされないように、必死で馬の首にしがみついた。そんな中、ルーカスは楽しそうに、両手を上げて楽しんでいる。
「ムリよ！　こんなの、死んでしまうわ！」
　横を見ると、視界がぶれて、景色の残像が見えた。
　速い、速すぎる。こんなに速いと、もはやメリーゴーランドではなく、ただの絶叫マシンと同じだ。せっかく楽しもうと思って乗ったメリーゴーランドだったのに、これでは台なしではないか。
「京一ー！　スピード落として！」
　乙葉がそう頼んでいるにもかかわらず、京一は相変わらず、操作室の中を見ていて、気がつかない。
「もう、京一ってばー！」
　はげしくまわっているメリーゴーランドの馬の上で、乙葉はあきらめずに、京一に呼びかけた。
「乙葉ー、楽しいね！」
　ルーカスがのんきにそう言った。
「なにが楽しいもんですか！」
　乙葉は大きな声で、文句を言った。
　しかしルーカスは、聞く耳を持たず、
「僕、速いの大好き！」と言った。
「いいえ、こんなの、メリーゴーランドじゃないわ。全然楽しくない」
　即座に乙葉が反論した。
　気持ちが悪くて吐き気がしそうだ。もういますぐにでも降りたい。乙葉は馬にうなだれるようにして、体をあずけた。
　となりにいるルーカスを見ると、なんで楽しくないのかわからないといった様子で、ぽかんとした顔をしている。どうやらルーカスは、乙葉の異変には、まるで気づいていないようだ。乙葉はそんなルーカスに呆れて、酔いながらも、小さくため息をついた。
「ん？　何だこれ」
　その時京一は、そんな大変な事態になっていることを知りもせずに、操作台の横に、なにかがぶら下がっているのを発見していた。