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2 残虐な着ぐるみ

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「えっ⁉︎ 食べ物、ないの?」
 びっくりして、思わず地面に、リュックを落とした乙葉が言った。
「うん、水はあるけどね。飲んだことないけど」
 人間は食料がないと生きられないと言うのに、ルーカスはまるで、なんでもないとでもいうような顔をして言った。
「じゃあ、ルーカスはずっとここで、飲まず食わず生活してたってこと?」
 信じられないと思いながら、乙葉が聞いた。
「そうだよ。別に僕、お腹なんてすかないし、喉も乾かないもん」
 それがさも、普通だというように、ルーカスが言った。
 乙葉は愕然がくぜんとしながら、ルーカスを見た。
 ルーカスはお腹が空かない。空を飛ぶ時点で、普通ではないことはわかっていたけど、お腹も空かないなんて、本当に不思議な存在だ。
「あら? ちょっと待って。じゃあなんで、私の貴重な食料であるお菓子を、あんなにたくさん食べちゃったの?」
 少しおこりながら乙葉が言った。
 するとルーカスは、
「だって、味はおいしいってわかるんだもん。それに、たまにはそういうものを食べるのも、悪くないなって思ったから」と、またしても悪気なさそうに言った。
「まあ……」
 乙葉は呆気にとられながら言った。
 食べてしまったものは、もうなにを言っても仕方がない。でも、いまはそんなことより、これから食べ物なしで、一体どうやって、飢えをしのいでいけばいいのだろう。とてつもない不安が、乙葉の中で渦まいた。
「でも、食べ物がなかったら、私死んじゃうわ」
 うつむきながら乙葉が言った。
「そしたら、ルーカスとも遊べなくなるのよ?」
「ああ、人間はそうだよね。でも、ないものはないんだから、仕方ないよ」
 あっけらかんとしながら、ルーカスが言った。
 この様子なら、今後本当に、乙葉が飢え死にすることがあっても、きっとルーカスは、一瞬だけ悲しんで、すぐに乙葉のことなど、忘れてしまうに違いない。そう思うと、乙葉は恐ろしくなった。そうならないためにも、すぐに元の世界に戻らなければならない。
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