ルーカスと呪われた遊園地（上）

２ 残虐な着ぐるみ

１８

　ルーカスは肩をすくめた。
「僕がそんな仕事なんてするわけないじゃん。第一、僕は子供だしさ。いつも自由に、毎日を自分の好きなように過ごしているだけだよ。寝たい時には寝るし、遊びたい時には遊ぶ。制限なんてひとつもないんだ。いいでしょ？」
　どうだと言わんばかりの顔で、ルーカスは乙葉を見た。
「うらやましいような、うらやましくないような……」
　乙葉は葛藤かっとうしながら言った。
「ねえねえ、乙葉は外で何やってたの？」
　突然、ルーカスが切り出した。
「私？　私は高校生だから、普通に学校に行ってるわよ」
　なんでもないように乙葉が言った。
「学校？」
　おどろきながらルーカスが言った。
「僕、学校なんて行ったことないや。学校って楽しいの？」
「楽しいわよ。だって学校に行けば、友達がいるし。その友達と、毎日くだらないことばかりやったり、話したりできるから」
　自然と笑顔になって乙葉が話した。
「ふーん」
　ルーカスはなにを思ったのか、口をすぼめた。
「なんて、学校って本当は勉強するところなんだけどね」
　そう言うと、乙葉は舌をちろりと出した。
「勉強？　僕は勉強なんて大嫌い！」
　苦い顔をしたルーカスが、声を張って言った。
「だから、学校なんてとこに行くより、この遊園地でのんびり暮らしていた方が、よっぽどいいや」
「そう？　まあ考え方は、人それぞれちがって当然よね」
　乙葉は妙に納得しながら言った。
「とにかく、もうバーサークにはかかわらない方がいいよ。かかわったら殺されちゃうから。そしたら、僕の遊び相手もいなくなっちゃうし、いいことない」と話した。
　この時乙葉は、ルーカスに忠告されなくても、あんな殺人鬼とかかわる気なんて、少しもないと思った。