ルーカスと呪われた遊園地（上）

２ 残虐な着ぐるみ

１３

　そんな着ぐるみをよそに、その男の子は珍しそうに、乙葉のそばまで近寄ってくると、
「ねえ、名前なんて言うの？」と、尋ねてきた。
「私？　乙葉だけど……」
　うろたえながら乙葉が言った。
「オトハ？　へえ。なんか、可愛い名前だね！」
　笑顔になって、うれしそうに男の子が言った。
「ありがとう。あなたのお名前は？」
　乙葉がそう尋ねると、
「僕の名前はね、ルーカス！」と、元気よくルーカスが答えた。
「そう、変わったお名前なのね」
　乙葉が言った。
「そうでしょ？」
　自慢げにルーカスが言った。
「ええ。でも、とっても素敵な名前よ」
　微笑みながら乙葉がほめた。
　ルーカスは一瞬、おどろいた顔をすると、
「ステキ？　僕の名前、ステキ？」と言った。
　乙葉はそれについてなにも言わなかったが、ルーカスは、
「ステキ、ステキ、ステキ……わあ、うれしいなあ！」と、一人でしゃべり続けたあと、一度、大きく宙返りした。
「まあ、大げさよ」
　ルーカスのものすごい喜びぶりを見ながら、乙葉が言った。
　するとルーカスは、突然、乙葉の目の前までやってきて、
「ねえ、僕と友達になろうよ！」と言った。
「えっ、友達？」
　乙葉は予想外のことをいわれ、まごついた。
「ダメ？」
　上目づかいでルーカスが聞くと、
「ええ、もちろんいいわ」と、こころよく乙葉が言った。
「本当⁉︎」