上 下
26 / 256
2 残虐な着ぐるみ

12

しおりを挟む
「俺様の邪魔をするなと、一体何度いえばわかるんだ!」
「あはは」
 声の主は高らかに笑った。
 しばらく見続けていると、上で飛んでいた“なにか”は、徐々に下におりてきた。
 やがて、はっきりとそれが、なにかわかるところまで見えてくると、
「うわっ! やっぱり、人間だわ!」と、乙葉は思わず、飛び起きて声を出した。
 ありえない。人がなにも機械を使わずに、自由に空を飛んでいる。しかも子供だ。
 目の前で起こっている光景が信じられずに、乙葉は自分の目をうたがった。
「えへへ、すごいでしょー」
 乙葉の反応を見て笑いながら、空中に浮いている子供が言った。
 動揺した心をなんとか落ち着かせ、乙葉はいまだにぷかぷかと空中に浮き続けているその子供を、冷静に見ることにした。
 目の前で空を飛んでいるのは、狼の着ぐるみを着た小さな男の子だった。マントを着て顔を隠している着ぐるみとはちがい、男の子の顔だけが着ぐるみから露出ろしゅつしていた。
 男の子の年齢は、五才か六才くらいに見える。顔をよく見ると、肌が白くきれいで、青い目をしている。とても整ったかわいらしい顔立ちだ。前髪が少しだけ出ているのだが、黒髪ではなく金髪だった。
 その姿は、一目で外国人だとわかる見た目をしていた。
「下までおりてこい! 悪いことをしたやつは、俺様がこらしめてやる!」
 着ぐるみがどなった。
「やだよー」
 男の子は空中であぐらをかきながら言った。
「悪いことをしたのはそっちでしょ? 僕、なーんにも悪くないもんね」
「うるさい! 誰がなんといおうと、俺様のいうことは絶対だ」
 空中にいる男の子を指さしながら、着ぐるみは何度も跳ねている。
「悔しかったらここまでくればー?」
 男の子が上で挑発した。
「キーッ! この生意気なガキめ!」
 男の子の挑発により、着ぐるみは怒り狂ったようになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

GREATEST BOONS+

丹斗大巴
児童書・童話
 幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。  異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)を生みだし、規格外のインベントリ&ものづくりスキルを使いこなす! ユニークスキルのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅する、ほのぼの異世界珍道中。  便利な「しおり」機能、「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です!

あやかし達の送り屋をやっています! 〜正反対な狐のあやかし双子との出会い〜

巴藍
児童書・童話
*第2回きずな児童書大賞にて、ファンタジー賞を受賞しました。 みんなには見えない不思議なナニカが見える、小学五年生の長月結花。 ナゾの黒い影に付きまとわれたり、毎日不思議なナニカに怖い思いをしながら過ごしていた。 ある日、結花のクラスにイケメン双子の転校生がやってくる。 イケメン双子の転校生には秘密があって、なんと二人は狐の『あやかし』……!? とあるハプニングから、二人の『送り屋』のお仕事を手伝うことになり、結花には特別な力があることも発覚する。 イケメン双子の烈央と星守と共に、結花は沢山のあやかしと関わることに。 凶暴化した怪異と戦ったり、神様と人間の繋がりを感じたり。 そんな不思議なナニカ──あやかしが見えることによって、仲違いをしてしまった友達との仲直りに奮闘したり。 一人の女の子が、イケメン双子や周りの友達と頑張るおはなしです。 *2024.8/30、完結しました!

ひみつを食べる子ども・チャック

山口かずなり
児童書・童話
チャックくんは、ひみつが だいすきな ぽっちゃりとした子ども きょうも おとなたちのひみつを りようして やりたいほうだい だけど、ちょうしにのってると  おとなに こらしめられるかも… さぁ チャックくんの運命は いかに! ー (不幸でしあわせな子どもたちシリーズでは、他の子どもたちのストーリーが楽しめます。 短編集なので気軽にお読みください) 下記は物語を読み終わってから、お読みください。 ↓ 彼のラストは、読者さまの読み方次第で変化します。 あなたの読んだチャックは、しあわせでしたか? それとも不幸? 本当のあなたに会えるかもしれませんね。

【完結】カラ梅雨、美津希! ―蛙化女子高生の日常―

ginrin3go/〆野々青魚
児童書・童話
完結しました! 川原美津希(かわはらみづき)は高校一年生。 彼女は憧れの先輩にひとめぼれしてしまい、カナヅチにもかかわらず水泳部へと入部してしまう。 いくら頑張ってもまともに泳ぐことすらできない美津希。 記録会を前にした練習で溺れてしまうという失態を演じ、とうとう退部を決意する。 その日の夜、彼女の身にとんでもないことが起こる。 SF(すこしふしぎ)系のぬるいお話。全11話 約2万2000字の短編です。 ※本作は奨励賞を頂戴した長編のプロトタイプ的な作品で、作中、似たシチュエーションがあります。 今回はあえてその部分は変更せず、そのまま公開いたします。

超調味料ドラフト会議

氷室ゆうり
児童書・童話
初期に描いた作品です。さすがに荒い部分も多いですが、私の作品のなんとなくの方針を決めたのもこれです。

綺麗なモノ集め

倉辻 志緒
児童書・童話
瀬戸内澪、十四歳は綺麗なモノが大好き。 半年前くらいから“煌めきconnection“というバンドが好き。 ついに初ライブに参戦!……したのは良いけれど、金髪の怪しげな女性が隣の席から話しかけてきて…… 大好きなバンドが繋ぐ、ラブコメ開幕しました☆。.:*・゜

タヌキ食堂へようこそ

んが
児童書・童話
森の中にタヌキが経営する食堂があります。 隣町に住んでいるカスガは偶然森を散歩中に食堂を見つけて中に入ります。 特におなかがすいていなかったカスガは飲み物を頼みくつろいでいると、トガリネズミがやってきて……。 食堂をめぐるお話を書いてみました。 読んでみてください。

龍神の化身

田原更
児童書・童話
二つの大陸に挟まれた海に浮かぶ、サヤ島。サヤ島では土着の信仰と二つの宗教が共存し、何百年もの調和と繁栄と平和を享受していた。 この島には、「龍神の化身」と呼ばれる、不思議な力を持った少年と少女がいた。二人は龍神の声を聞き、王に神託を与え、国の助けとなる役割があった。少年と少女は、6歳から18歳までの12年間、その役に就き、次の子どもに力を引き継いでいた。 島一番の大金持ちの長女に生まれたハジミは、両親や兄たちに溺愛されて育った。六歳になったハジミは、龍神の化身として選ばれた。もう一人の龍神の化身、クジャは、家庭に恵まれない、大人しい少年だった。 役目を果たすうちに、龍神の化身のからくりに気づいたハジミは、くだらない役割から逃げだそうと、二年越しの計画を練った。その計画は、満月の祭の夜に実行されたが……。 40000字前後で完結の、無国籍系中編ファンタジーです。

処理中です...