ルーカスと呪われた遊園地（上）

２ 残虐な着ぐるみ

１０

　人の首をしめているにもかかわらず、着ぐるみがその行動に似合わない、おだやかな声で言った。
「離し……てっ」
　再び乙葉が言った。
「わからずやな娘だな。何回言っても同じことだ」
　呆れた声で着ぐるみが言った。
「わかった。じゃあ、あまり苦しくないように、すぐに殺してやろう」
　そう言うと、着ぐるみは先ほどよりも強い力を出して、乙葉の首をしめた。
「うがっ！」
　口を大きく開けて、乙葉がうなった。
「ふは、苦しいか？　苦しいよな。でも大丈夫、きっともうすぐ終わるから」
　うれしそうな声で着ぐるみが言った。
　乙葉の口から一筋のよだれが出てきた。よだれは段々下にたれていき、着ぐるみの手までつたった。
「……ふっ……が…………」
　さきほどよりも、いっそう苦しくなった乙葉が言った。
「さあ、もうすぐだ」
　ひどく不気味な声で着ぐるみがそう言った時、乙葉の手足の力はなくなり、だらんと下にさがった。
　そして、乙葉はもうなにも考えられなくなり、頭が真っ白になった。
「死ね」
　着ぐるみが低く野太い声で、短くそう言った。
　その瞬間、どこからか大きめの石がふってきて、着ぐるみの頭にあたった。
「あいたっ」
　着ぐるみはとっさに、片手で頭を押さえた。
　それから石は止まることなくふってきて、着ぐるみの頭につぎつぎとあたった。
「いてっ、いていて、いてっ」
　石を避けようとして、着ぐるみは乙葉の首をつかんだまま、暴れまわった。
「いったい誰だ！　こんな小癪こしゃくなイタズラをするやつは！」
　着ぐるみが憤慨ふんがいしながらそう言った。