ルーカスと呪われた遊園地(上)

大森かおり

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2 残虐な着ぐるみ

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 噴水近辺に緊迫した空気がながれる。着ぐるみはその場から一歩も動かずに、乙葉の様子をうかがっているように見えた。それで、すぐに危害を加えてくるわけではないことがわかり、乙葉はひとまず、ほっと胸をなで下ろした。
 いまのうちに逃げよう。そう思った乙葉は、急いでその場からはなれた。
 噂をすれば影がさすとは、このことかもしれない。いや、そんなことよりも、この状況はまずい。まだ十分に観察もできていないから、敵か味方かもわからない状態なのだ。それなのに、いきなり自分の存在を着ぐるみに知られるのはよくない。
 乙葉はただひたすらに、着ぐるみから逃げるように走った。もはやどこを走っているのかわからないくらい、がむしゃらに走った。
 見つかったら何をされるかわからない。だから絶対に、着ぐるみを振り切ってみせる。
 途中、乙葉は走りながら、着ぐるみがこちらを追いかけて来ているかどうか、警戒しながら振りかえって確かめた。
 すると意外なことに、振り返っても、着ぐるみの姿はどこにもなかった。
「あら? いないわ……」
 あまりにもがむしゃらになりすぎて、周りの状況が全く見えていなかった乙葉は、ここでようやく我に返り、走るのをやめた。
「なんで、追いかけてこないんだろう」
 息せき切りながら、乙葉は言った。
 必ず後を追いかけて来ると思い込み、走って逃げていたのだが、予想外だった。あるいは、途中まで追いかけて来ていた着ぐるみを、乙葉が振り切ったのかもしれない。どちらにしても、心配していたことはなにも起こらなくてよかった。
「はあ、疲れたし、ちょっと休憩しよう」
 すっかり安心したところで、その場に座ろうとしたところ、目の前のアスファルトに、影がさすのがわかった。
「やあ、ここにいたんだね」
 野太い声があたりに響いた。
 乙葉が恐る恐る見上げると、そこにはマントを着た着ぐるみが立っていた。
「キャーッ!」
 乙葉はとっさに悲鳴を上げた。
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