ルーカスと呪われた遊園地(上)

大森かおり

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2 残虐な着ぐるみ

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 こっちに来ないで、と乙葉は静かに祈った。しかし、そんな願いもむなしく、着ぐるみは間違いなくこちらに近づいてきた。
 乙葉は気づかれないように息をひそめた。
 やがて、着ぐるみはゲートの前で立ち止まった。乙葉がゲートの後ろにいることを着ぐるみは勘づいているのかどうかは定かではないが、こわくてたまらなかった。
 着ぐるみと乙葉の距離は一メートルもないように思える。この着ぐるみが乙葉になにか危害を加えるのかどうか、いまの時点ではわからない。でも、マントを着ているのが明らかにあやしい。逆に乙葉にとって、助っ人になってくれるような存在であればいいのだけど。いまのなにもわからない時点で、容易よういに近づくのは危ない気がする。乙葉は警戒心を強くして、着ぐるみの動向を観察した。
 着ぐるみはゲートの先を見ているように見えた。
 もちろん、顔はマントに隠されていて見えないけれど、ゲートの先に体が向いているから、きっとそうなのだろう。そうなると、乙葉がゲートの後ろにいることは気づいていないのかもしれない。
 しばらく止まっていた着ぐるみは、なにもないことを確認し終えたかのように、方向転換して歩き出した。
「ふう……」
 着ぐるみがどこかに行ったことによって、ずっと張り詰めていた気持ちがようやくゆるまった。
 でも、これでわかった。ここにいるのは乙葉だけではないと言うことが。
 敵か味方か——運命のわかれ道のような二択だ。もし敵なら、ここは地獄と化すだろう。反対に味方なら、ここはもちろん天国になる。絶対に後者であって欲しい。味方なら、ここから出られる方法を教えてくれるかもしれないし。でも、このまま避け続けていても、敵か味方かはずっとわからないままだ。いつかは顔を合わせてたしかめる必要がある。それはとても勇気がいることだけど、やるしかない。それまでの間は、先ほどのように、着ぐるみを遠くからよく観察して、敵か味方か見きわめよう。
「よし、ここにいても仕方ないし、これから園内を散策してみましょう」
 ずっと怖がって園内を見まわるのを避けていた乙葉だったが、自分以外に人がいることを知って、少し勇気が出てきたため、見まわることにした。
 敵だと考えたらこわいけど、まだそうと決まったわけではない。もし、着ぐるみが敵だったとして、出くわすようなことがあった時は、上手く隠れてやりすごすか、全力で逃げればいい。だから、きっと大丈夫。乙葉はそう信じて、ゲートからはなれた。

                 ♢♢♢
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