ルーカスと呪われた遊園地(上)

大森かおり

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2 残虐な着ぐるみ

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 眠りから目を覚ますと、あたりはすでに真っ暗になっていた。しかし残念なことに、ここは廃墟の遊園地ではなく、まだ幻のような遊園地の景色のままだった。
 どうして元の世界に戻れないのか。眠ったらきっと、元の世界に戻れるのだとばかり思っていたのに、その期待もむなしく終わった。
 一見すると、ライトアップされた普通の遊園地みたいだ。でも、普通じゃないのは、人が全くいないということ。それとくる前は、廃墟の遊園地だったということ。
 もう、なにがなんだか、さっぱりわからない。
 乙葉は悩み、頭をかかえるしかなかった。
(ああ……もしかしてここは、天国かなにかなのかしら。私もう死んじゃったとか……)
 この若さで死ぬなんて、悲しいにもほどがある。もっとやりたいことがたくさんあったのに。
 後悔の念にさいなまれていると、遠くの方で、なにかが動いたのが見えた。
「あれは、なに?」
 よく目を凝らして見てみると、なにか赤くて丸い物が、宙に浮かんでいるのがわかった。
「まあ、あれ風船だわ」
 夜中にぽつんと浮かぶその風船は、奇妙でしかなかった。その風船を凝視ぎょうししていると、光に照らされ、だんだんと、人の影のようなものが、後ろの暗闇から出現しはじめた。その影は徐々に、こちらに近づいてきている。
「なにかしら、あの影……」
 こわくなった乙葉は、とっさにリュックを持ち、ゲートの後ろに身をかくした。
 あれは、黒いマント? 黒いマントを着ている人……? でも、人にしては大柄だ。注意深く見ていると、こちらに向かってきているのは『着ぐるみの上に黒いマントを着た人』だということがわかった。あれが着ぐるみだとわかったのは、風船を持つ手が、ぬいぐるみのようにふさふさになっていたからだ。
 どうしてマントなんて着ているのだろう。せめて普通にしてくれていたら、少しは話しかけようという気になるものの、顔や姿が隠れている分、恐怖は消えない。
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