ルーカスと呪われた遊園地(上)

大森かおり

文字の大きさ
上 下
15 / 256
2 残虐な着ぐるみ

しおりを挟む
 京一はバイトの後、河原に行って剣道の練習を長時間行った。そして一度家に帰り、シャワーを浴びて汗を流したあと、友達と約束していた夜ご飯を食べて、ふたたび家に帰った。
 今日は充実した一日だった。満足した面持ちで、京一はリビングの扉を開けた。
「ただいま」
「ああ、おかえり」
 母はどこか不安そうな顔をしながら、スマホを片手に突っ立っていた。
 なにかおかしい。いつもの母とちがって、様子が変だ。
「京一さ、今日どこかで乙葉ちゃん見なかった?」
 唐突に母が言った。
「乙葉? ああ、あいつなら、今朝、俺のバイト先にきていたよ」
 こともなげに京一が言った。
 この母の挙動不審きょどうふしんさは乙葉が原因なのか。京一は疑問に思いつつ、母の次の言葉を待った。
「それからは?」
 なぜか執拗しつように母が尋ねた。
「いや? その後のことはわからない——え、もしかして母さん、乙葉に何かあったのか?」
 京一がけげんに思って聞くと、母は残念そうに、少しうつむいた。
「それが……夜になっても、家に帰ってこないそうなんだよ」
 母が視線を落としてそう言った。
 なるほど、原因はそれか。全く、乙葉のやつ、一体どこで道草食ってんだ。京一は乙葉に呆れつつも、母に状況を尋ねることにした。
「連絡は?」
「全くないって。だから、乙葉ちゃんのお母さんがなにか知らないかって、さっき私のスマホに電話してきたんだよ。誘拐されたんじゃないかとか、すごく心配しているみたいで。だから京一だったら、なにか知ってるんじゃないかと思っていたんだけど、そっか。京一も知らないか」
 母は困ったように眉尻を下げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

【完結】だるま村へ

長透汐生
児童書・童話
月の光に命を与えられた小さなだるま。 目覚めたのは、町外れのゴミ袋の中だった。 だるまの村が西にあるらしいと知って、だるまは犬のマルタと一緒に村探しの旅に出る。旅が進むにつれ、だるま村の秘密が明らかになっていくが……。

転校生はおんみょうじ!

咲間 咲良
児童書・童話
森崎花菜(もりさきはな)は、ちょっぴり人見知りで怖がりな小学五年生。 ある日、親友の友美とともに向かった公園で木の根に食べられそうになってしまう。助けてくれたのは見知らぬ少年、黒住アキト。 花菜のクラスの転校生だったアキトは赤茶色の猫・赤ニャンを従える「おんみょうじ」だという。 なりゆきでアキトとともに「鬼退治」をすることになる花菜だったが──。

夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~

世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。 友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。 ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。 だが、彼らはまだ知らなかった。 ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。 敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。 果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか? 8月中、ほぼ毎日更新予定です。 (※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)

大嫌いなキミに愛をささやく日

またり鈴春
児童書・童話
私には大嫌いな人がいる。 その人から、まさか告白されるなんて…! 「大嫌い・来ないで・触らないで」 どんなにヒドイ事を言っても諦めない、それが私の大嫌いな人。そう思っていたのに… 気づけば私たちは互いを必要とし、支え合っていた。 そして、初めての恋もたくさんの愛も、全部ぜんぶ――キミが教えてくれたんだ。 \初めての恋とたくさんの愛を知るピュアラブ物語/

そうして、女の子は人形へ戻ってしまいました。

桗梛葉 (たなは)
児童書・童話
神様がある日人形を作りました。 それは女の子の人形で、あまりに上手にできていたので神様はその人形に命を与える事にしました。 でも笑わないその子はやっぱりお人形だと言われました。 そこで神様は心に1つの袋をあげたのです。

弟は、お人形さんになりました

るい
絵本
あるところに、お母さん、お父さん、お兄ちゃん、弟くんの4人で出来た、ごく普通の家庭がありました。 この家族は貧しくもなければ潤沢な訳でもなく、ごくごく普通の家庭でした。 お母さんは優しいし、お父さんはサラリーマン、お兄ちゃんはたくましい。 でも弟くんは、お人形さん。 【注】このお話は少しホラーテイストになっております。苦手な方は十分注意の上閲覧ください。

夏から夏へ ~SumSumMer~

崗本 健太郎
児童書・童話
作者、崗本 健太郎の小学生時代の回顧録であり、 誰しも経験する子供の頃の懐かしい思い出が詰まっている。 短編が150話ほど収録されており、 通勤や就寝前など隙間時間にも読みやすい構成だ。 作者と読者との地域性や遊びの違いや、 平成初期の時代を感じさせる作風も魅力である。 日常の喧騒を忘れて癒されたい人は是非!! ※毎日20時公開 全48話 下記サイトにて電子書籍で好評販売中!! Amazon-Kindle:www.amazon.co.jp/kindle BOOK WALKER:www.bookwalker.jp

処理中です...