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1 迷い込んだ少女

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「そうだわ、スマホ!」
 急いでポケットからスマホをとり出すと、どうしたことか、圏外になっていた。
「うそ……これじゃ、誰とも連絡が取れないじゃない……」
 、乙葉の頭の中で、その二文字の言葉がよぎった。しかし、すぐにかぶりを振って、何とか落ち着こうとした。
 どうにかしなければならない。この世界から抜け出さなければ。でも、どうやって? 方法が全くわからない。
 とにかく、門を叩きながらずっと助けを呼んでいても仕方がない。もう一度、最初の場所に戻って考えようと思い、乙葉は元の場所に向かって歩いた。
 戻っている途中で、いままで気づかなかったのだが、チケット売り場をすぎた辺りに、門がもう一つ存在していることがわかった。こちらは門、と言うよりも、ゲートと言った方がふさわしいのかもしれない。そしてそのゲートには、大きな看板が目立つように取りつけられていた。
Twilight Dark Castleトワイライト・ダーク・キャッスル
 乙葉はその看板を下から見上げると、
「ト、トワイ……トワイライト・ダーク・キャッスル?」と、英語があまり得意ではないために、おぼつかない口ぶりで読み上げた。
 おそらく、この遊園地の名称なのだろう。初めて聞く名前だ。なんにしても、ここは通常の世界とは違う。乙葉は自分が、なにか幻でも見ているような感覚におちいった。
 元の場所にもどると、相変わらず乗り物は動いていて、音楽も同じように鳴りつづけていた。
 もし、ここが夢の世界なら、楽しんでもいいような気はするけど、とても夢には思えない。だから、園内を見回るのですらこわい。
 乙葉はその場に腰を下ろし、体育座りをした。
 この明らかにおかしな世界から抜け出すにはどうしたらいいのか、冷静に考えよう。
 単純に考えて、ここには意識を失って来たのだから、このまま眠ってしまえばいいのではないか。でも、そんなに簡単にうまくいくだろうか。とは言っても、門の外に出ようにも出られないし、たとえ出られたとしても変な世界のままだし、ほかに方法がない。
 これ以上何かを考えても堂々めぐりをしそうだし、もう眠ってしまおう。きっとそれが一番いい。そう思うと、乙葉は地面に寝転び、背中に背負っていたリュックを枕にして、静かにゆっくりと目を閉じた。
 空は曇っているから暑くはない。寝るには最適な天気と気温だったが、場所が遊園地なだけあって、周りが騒がしく、中々眠れなかった。でも、山に登って少し疲れていたのか、しばらくして眠りにつくことができた。
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