14 / 256
1 迷い込んだ少女
12
しおりを挟む
「そうだわ、スマホ!」
急いでポケットからスマホをとり出すと、どうしたことか、圏外になっていた。
「うそ……これじゃ、誰とも連絡が取れないじゃない……」
絶望、乙葉の頭の中で、その二文字の言葉がよぎった。しかし、すぐにかぶりを振って、何とか落ち着こうとした。
どうにかしなければならない。この世界から抜け出さなければ。でも、どうやって? 方法が全くわからない。
とにかく、門を叩きながらずっと助けを呼んでいても仕方がない。もう一度、最初の場所に戻って考えようと思い、乙葉は元の場所に向かって歩いた。
戻っている途中で、いままで気づかなかったのだが、チケット売り場をすぎた辺りに、門がもう一つ存在していることがわかった。こちらは門、と言うよりも、ゲートと言った方がふさわしいのかもしれない。そしてそのゲートには、大きな看板が目立つように取りつけられていた。
『Twilight Dark Castle』
乙葉はその看板を下から見上げると、
「ト、トワイ……トワイライト・ダーク・キャッスル?」と、英語があまり得意ではないために、おぼつかない口ぶりで読み上げた。
おそらく、この遊園地の名称なのだろう。初めて聞く名前だ。なんにしても、ここは通常の世界とは違う。乙葉は自分が、なにか幻でも見ているような感覚におちいった。
元の場所にもどると、相変わらず乗り物は動いていて、音楽も同じように鳴りつづけていた。
もし、ここが夢の世界なら、楽しんでもいいような気はするけど、とても夢には思えない。だから、園内を見回るのですらこわい。
乙葉はその場に腰を下ろし、体育座りをした。
この明らかにおかしな世界から抜け出すにはどうしたらいいのか、冷静に考えよう。
単純に考えて、ここには意識を失って来たのだから、このまま眠ってしまえばいいのではないか。でも、そんなに簡単にうまくいくだろうか。とは言っても、門の外に出ようにも出られないし、たとえ出られたとしても変な世界のままだし、ほかに方法がない。
これ以上何かを考えても堂々めぐりをしそうだし、もう眠ってしまおう。きっとそれが一番いい。そう思うと、乙葉は地面に寝転び、背中に背負っていたリュックを枕にして、静かにゆっくりと目を閉じた。
空は曇っているから暑くはない。寝るには最適な天気と気温だったが、場所が遊園地なだけあって、周りが騒がしく、中々眠れなかった。でも、山に登って少し疲れていたのか、しばらくして眠りにつくことができた。
急いでポケットからスマホをとり出すと、どうしたことか、圏外になっていた。
「うそ……これじゃ、誰とも連絡が取れないじゃない……」
絶望、乙葉の頭の中で、その二文字の言葉がよぎった。しかし、すぐにかぶりを振って、何とか落ち着こうとした。
どうにかしなければならない。この世界から抜け出さなければ。でも、どうやって? 方法が全くわからない。
とにかく、門を叩きながらずっと助けを呼んでいても仕方がない。もう一度、最初の場所に戻って考えようと思い、乙葉は元の場所に向かって歩いた。
戻っている途中で、いままで気づかなかったのだが、チケット売り場をすぎた辺りに、門がもう一つ存在していることがわかった。こちらは門、と言うよりも、ゲートと言った方がふさわしいのかもしれない。そしてそのゲートには、大きな看板が目立つように取りつけられていた。
『Twilight Dark Castle』
乙葉はその看板を下から見上げると、
「ト、トワイ……トワイライト・ダーク・キャッスル?」と、英語があまり得意ではないために、おぼつかない口ぶりで読み上げた。
おそらく、この遊園地の名称なのだろう。初めて聞く名前だ。なんにしても、ここは通常の世界とは違う。乙葉は自分が、なにか幻でも見ているような感覚におちいった。
元の場所にもどると、相変わらず乗り物は動いていて、音楽も同じように鳴りつづけていた。
もし、ここが夢の世界なら、楽しんでもいいような気はするけど、とても夢には思えない。だから、園内を見回るのですらこわい。
乙葉はその場に腰を下ろし、体育座りをした。
この明らかにおかしな世界から抜け出すにはどうしたらいいのか、冷静に考えよう。
単純に考えて、ここには意識を失って来たのだから、このまま眠ってしまえばいいのではないか。でも、そんなに簡単にうまくいくだろうか。とは言っても、門の外に出ようにも出られないし、たとえ出られたとしても変な世界のままだし、ほかに方法がない。
これ以上何かを考えても堂々めぐりをしそうだし、もう眠ってしまおう。きっとそれが一番いい。そう思うと、乙葉は地面に寝転び、背中に背負っていたリュックを枕にして、静かにゆっくりと目を閉じた。
空は曇っているから暑くはない。寝るには最適な天気と気温だったが、場所が遊園地なだけあって、周りが騒がしく、中々眠れなかった。でも、山に登って少し疲れていたのか、しばらくして眠りにつくことができた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
綺麗なモノ集め
倉辻 志緒
児童書・童話
瀬戸内澪、十四歳は綺麗なモノが大好き。
半年前くらいから“煌めきconnection“というバンドが好き。
ついに初ライブに参戦!……したのは良いけれど、金髪の怪しげな女性が隣の席から話しかけてきて……
大好きなバンドが繋ぐ、ラブコメ開幕しました☆。.:*・゜
白紙の本の物語
日野 祐希
児童書・童話
春のある日、小学六年生の総司と葵は図書室で見つけた白紙の本に吸いこまれてしまう。
二人が目を開けると、広がっていたのは一面の銀世界。そこは、魔女の魔法で雪に閉ざされてしまった国だった。
「この国を救って、元の世界に帰る」
心を決めた総司と葵は、英雄を目指す少年・カイと共に、魔女を倒す旅に出る。
雪に隠された真実と、白紙の本につむがれる物語の結末とは。
そして、総司と葵は無事に元の世界へ帰ることができるのか。
今、冒険が幕を開く――。
※第7回朝日学生新聞社児童文学賞最終候補作を改稿したものです。
タヌキ食堂へようこそ
んが
児童書・童話
森の中にタヌキが経営する食堂があります。
隣町に住んでいるカスガは偶然森を散歩中に食堂を見つけて中に入ります。
特におなかがすいていなかったカスガは飲み物を頼みくつろいでいると、トガリネズミがやってきて……。
食堂をめぐるお話を書いてみました。
読んでみてください。
ウロ~森に咲く赤い花~
大秦頼太
児童書・童話
その顔を見たものは誰でも笑い転げる。森に住む少年ウロはそんな顔が嫌で袋をかぶって毎日を過ごしていました。ある日、その噂を耳にしたお城の兵士たちがウロを捕まえるために森へとやってくるのでした。
※絵本ひろばで公開中。
なお、アマゾンキンドルにて加筆修正版を販売中。
ひみつを食べる子ども・チャック
山口かずなり
児童書・童話
チャックくんは、ひみつが だいすきな ぽっちゃりとした子ども
きょうも おとなたちのひみつを りようして やりたいほうだい
だけど、ちょうしにのってると
おとなに こらしめられるかも…
さぁ チャックくんの運命は いかに!
ー
(不幸でしあわせな子どもたちシリーズでは、他の子どもたちのストーリーが楽しめます。 短編集なので気軽にお読みください)
下記は物語を読み終わってから、お読みください。
↓
彼のラストは、読者さまの読み方次第で変化します。
あなたの読んだチャックは、しあわせでしたか?
それとも不幸?
本当のあなたに会えるかもしれませんね。
龍神の化身
田原更
児童書・童話
二つの大陸に挟まれた海に浮かぶ、サヤ島。サヤ島では土着の信仰と二つの宗教が共存し、何百年もの調和と繁栄と平和を享受していた。
この島には、「龍神の化身」と呼ばれる、不思議な力を持った少年と少女がいた。二人は龍神の声を聞き、王に神託を与え、国の助けとなる役割があった。少年と少女は、6歳から18歳までの12年間、その役に就き、次の子どもに力を引き継いでいた。
島一番の大金持ちの長女に生まれたハジミは、両親や兄たちに溺愛されて育った。六歳になったハジミは、龍神の化身として選ばれた。もう一人の龍神の化身、クジャは、家庭に恵まれない、大人しい少年だった。
役目を果たすうちに、龍神の化身のからくりに気づいたハジミは、くだらない役割から逃げだそうと、二年越しの計画を練った。その計画は、満月の祭の夜に実行されたが……。
40000字前後で完結の、無国籍系中編ファンタジーです。
あやかし達の送り屋をやっています! 〜正反対な狐のあやかし双子との出会い〜
巴藍
児童書・童話
*第2回きずな児童書大賞にて、ファンタジー賞を受賞しました。
みんなには見えない不思議なナニカが見える、小学五年生の長月結花。
ナゾの黒い影に付きまとわれたり、毎日不思議なナニカに怖い思いをしながら過ごしていた。
ある日、結花のクラスにイケメン双子の転校生がやってくる。
イケメン双子の転校生には秘密があって、なんと二人は狐の『あやかし』……!?
とあるハプニングから、二人の『送り屋』のお仕事を手伝うことになり、結花には特別な力があることも発覚する。
イケメン双子の烈央と星守と共に、結花は沢山のあやかしと関わることに。
凶暴化した怪異と戦ったり、神様と人間の繋がりを感じたり。
そんな不思議なナニカ──あやかしが見えることによって、仲違いをしてしまった友達との仲直りに奮闘したり。
一人の女の子が、イケメン双子や周りの友達と頑張るおはなしです。
*2024.8/30、完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる