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1 迷い込んだ少女
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音が聞こえる。にぎやかな音。まるでパレードのようだ。この音は一体、どこから流れているのだろう。自分もそこに行きたい。遊びたい。
目を開けると、カラフルで煌びやかな世界が目の前に広がっていた。きちんとメンテナンスされているようなジェットコーターやメリーゴーランド、観覧車などたくさんの乗り物が動いている。それに夢で聞いたはずの、思わず踊りたくなるような音楽も流れている。
乙葉はゆっくりと起き上がった。
(ここは——)
まだ完全に働いていない脳を、頑張ってフル回転させて、思考をめぐらした。
(どこ? 私、何でここにいるの?)
乙葉は必死でこれまでの記憶をたどった。
(たしか、三毛猫を追いかけて、ここまでやって来て、帰ろうとしたら気を失って——)
そこで、ハッとしたように顔を上げた。
(そうだ! 思い出した。自分は三毛猫と一緒に、廃墟の遊園地にいたんだ。だから、ここは廃墟の遊園地で間違いないはず)
でも、最初に見た時とあきらかに外観がちがう。錆びても古くもないし、どこにも雑草が生えていないし、乗り物も壊れていない。それどころか、ここは全てがまるで新品のように輝いていて、乗り物がきちんと機能している。
それなのに、不思議だ。誰もいる気配がない。いや、探したらどこかに人がいるのかもしれないけど。いまのところは一人も見当たらないし、肝心の三毛猫もそばにはいない。
とりあえず、一人でここにいても仕方がない。今日のところは三毛猫のことは諦めて、家に帰ろう。そう思い、乙葉は出入り口に向かった。
「扉が、閉まってる……」
最初にきた時には空いていたはずの、わずかな隙間がなくなっていた。扉はぴっちりと閉まっている。来た時と同様、扉を開けようと何度も押したり引いたりしているのだが、扉が動くことはなく、びくともしない。固すぎて動かすことは不可能なようだ。あんなに地面と一体化していた扉が、どうして今は完全に閉まっているのか。それに、扉も汚れが一つもなく、きれいになっていて、まるで別物のようだ。
(おかしい。おかしいけど、そんなことより……)
「私、閉じ込められちゃったの⁉︎」と、誰も聞いていないにもかかわらず、乙葉は焦りながら大声を発した。
「誰か! 誰か助けて!」
必死に門を叩いて叫ぶが、誰も返事をしてくれない。それによく見ると、なんだか門の外がおかしい。きた時と同じ景色ではなくなっている。最初は除草が全くされておらず、伸びた草がアスファルトにまで浸食していたのだが、いまはその草が全て消えており、アスファルトがきれいに姿をあらわしていた。
意識を失っている少しの間に、景色がここまで変わるなんて、ありえない。
ここは一体なに? 夢の中なの? でも、意識や感触がしっかりとある。夢ではないはずだ。
ここが現実なら、仮に門の外に出られたとしても、見た景色が全く別物だから、家に帰れないのではないか。そう考えると、乙葉は背筋がこおって、一気に顔が青ざめた。
目を開けると、カラフルで煌びやかな世界が目の前に広がっていた。きちんとメンテナンスされているようなジェットコーターやメリーゴーランド、観覧車などたくさんの乗り物が動いている。それに夢で聞いたはずの、思わず踊りたくなるような音楽も流れている。
乙葉はゆっくりと起き上がった。
(ここは——)
まだ完全に働いていない脳を、頑張ってフル回転させて、思考をめぐらした。
(どこ? 私、何でここにいるの?)
乙葉は必死でこれまでの記憶をたどった。
(たしか、三毛猫を追いかけて、ここまでやって来て、帰ろうとしたら気を失って——)
そこで、ハッとしたように顔を上げた。
(そうだ! 思い出した。自分は三毛猫と一緒に、廃墟の遊園地にいたんだ。だから、ここは廃墟の遊園地で間違いないはず)
でも、最初に見た時とあきらかに外観がちがう。錆びても古くもないし、どこにも雑草が生えていないし、乗り物も壊れていない。それどころか、ここは全てがまるで新品のように輝いていて、乗り物がきちんと機能している。
それなのに、不思議だ。誰もいる気配がない。いや、探したらどこかに人がいるのかもしれないけど。いまのところは一人も見当たらないし、肝心の三毛猫もそばにはいない。
とりあえず、一人でここにいても仕方がない。今日のところは三毛猫のことは諦めて、家に帰ろう。そう思い、乙葉は出入り口に向かった。
「扉が、閉まってる……」
最初にきた時には空いていたはずの、わずかな隙間がなくなっていた。扉はぴっちりと閉まっている。来た時と同様、扉を開けようと何度も押したり引いたりしているのだが、扉が動くことはなく、びくともしない。固すぎて動かすことは不可能なようだ。あんなに地面と一体化していた扉が、どうして今は完全に閉まっているのか。それに、扉も汚れが一つもなく、きれいになっていて、まるで別物のようだ。
(おかしい。おかしいけど、そんなことより……)
「私、閉じ込められちゃったの⁉︎」と、誰も聞いていないにもかかわらず、乙葉は焦りながら大声を発した。
「誰か! 誰か助けて!」
必死に門を叩いて叫ぶが、誰も返事をしてくれない。それによく見ると、なんだか門の外がおかしい。きた時と同じ景色ではなくなっている。最初は除草が全くされておらず、伸びた草がアスファルトにまで浸食していたのだが、いまはその草が全て消えており、アスファルトがきれいに姿をあらわしていた。
意識を失っている少しの間に、景色がここまで変わるなんて、ありえない。
ここは一体なに? 夢の中なの? でも、意識や感触がしっかりとある。夢ではないはずだ。
ここが現実なら、仮に門の外に出られたとしても、見た景色が全く別物だから、家に帰れないのではないか。そう考えると、乙葉は背筋がこおって、一気に顔が青ざめた。
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