ルーカスと呪われた遊園地(上)

大森かおり

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1 迷い込んだ少女

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(この中に、さっきの三毛猫がいるかもしれない……)
 あの三毛猫のことを、どうしてもほうっておけなかった乙葉は、入るか入らないか迷って、緊張からつばを飲み込んだ。
 外観がすでにおそろしさを物語っているのだ。こんな不気味な場所に一人で入るなんて、普通だったら考えられない。
 でも、あの三毛猫のことを、このまま見過ごすなんて薄情なこと、乙葉にはできっこなかった。とはいえ、まだ午前中の明るい時間だ。夜に比べたらそこまでこわくはない。だから中に入って、できるだけはやくあの三毛猫を探し、つかまえて一緒に街に戻ろう。そう決心した乙葉は、まずどうやって、この門の中に入ろうかと思い、近づいて様子をうかがった。
 よく見ると、片側の扉が少しだけ開いていることがわかった。乙葉は両手で、その扉をさらに開けようと引っ張った。しかし、どうしたことか、一ミリも動かない。それでも諦めずに、何度か開けることに挑戦しても、全て同じ結果に終わった。まるで扉が地面と一体化しているかのように、固くなってしまっている。普段人がまったく訪れていない証拠だ。
 本当に困った。でも、この隙間なら、人一人分くらいはがんばったら入れるかもしれない。これはもう強硬手段だ。
 乙葉は扉のわずかな隙間に体を突っ込み、無理やり中に入った。
 門を通り抜けると、目の前にはチケットを購入する建物があった。もちろん働いているスタッフがいるわけでもないが。
 その建物を横目で見ながら、乙葉はおそるおそる先へ進んだ。
 すると、視線の先で、先ほどの三毛猫がのんきに毛づくろいをしていた。
「見つけた! もー。こんなところにいたの? はやく一緒に帰りましょう」
 乙葉はそばに近寄り、三毛猫を抱きかかえた。そして一刻もはやく、この不気味な場所から出たいと思い、急いで踵を返した。
 その時、急に目の前の景色がゆがんだ。一時のめまいかと思いきや、すぐにはなおらなかった。次第に手の力はなくなり、三毛猫は乙葉の手から離れた。
(あ……れ……?)
 周りがぐるぐる回って見える。気が遠くなりそうだ。頭も締めつけられるように痛い。
 乙葉は立っていられなくなり、そのまま地面に膝から倒れた。
(京一……)
 まもなくして、乙葉は意識を失った。

                 ♢♢♢
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