ルーカスと呪われた遊園地(上)

大森かおり

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1 迷い込んだ少女

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 しまった。少し目を離したすきに、いなくなってしまった。
 一瞬、もう諦めて下におりようかという考えが浮かんだ。しかし、せっかくここまできて、頂上に展望台があるかもしれないのに、行かないなんて、もったいない。乙葉は三毛猫がいなくとも、上まで登ろうと決心した。
 やがて、辺りが暗くなってきた。これまでずっと晴れていたはずの空は、どんよりと曇ってしまったようだ。
 途中、古くなった看板のようなものを見たが、変色したりこわれたりして、文字が見えなくなっていた。それを見ると、少し不気味な感じがした。
 しばらく登っていると、上に観覧車のようなものが見えた。
 なんでこんな場所に? もしかして、この上には遊園地があるのか。そう思うと、途端にうれしくなった。
 でも、長い間この周辺に住んでいるのに、遊園地があることを知らないはずはない。遊園地が営業しているなら、友達や家族の間で、話題になるはずだ。それなのに、全く話題にならないなんて、なにかおかしい。スマホでマップを見たときも、遊園地なんて記載もなかった。
 不思議に思って観覧車をよく見ると、古く錆びついていることがわかった。それに、苔のような緑におおわれている。もう営業はしていないのだろうか。
 ——そうだ、思い出した。前に親や先生から聞いたことがある。山の上にある廃墟の遊園地には、絶対に近づかないように、と。
 それを思い出した乙葉は、急いで後戻りをしようと、きびすを返した。
 すると、後ろで草が動くような音がして、体をビクつかせた。恐る恐る振り返ってみると、先ほど一緒に歩いていた、三毛猫がいた。
「あら、そんなところにいたのね!」
 乙葉はすぐに、この危険な場所から、三毛猫と一緒に去ろうと思い、抱き抱えようと近づくと、三毛猫は乙葉を追いこし、はやくも坂の上を、走って上って行ってしまった。
「あ! そっちには行っちゃダメよ!」
 三毛猫には乙葉の声は届かない。乙葉は急いで、三毛猫のあとを追った。
 それから、どのくらい上ったのか定かではないが、目の前に、遊園地の出入口があらわれた。洋風の大きな鋳物いもの門扉もんぴになっているが、つる植物が門を全体的に侵食している。中央には、鎖で吊るされている看板があり、『立ち入り禁止』と赤文字で書かれている。
 乙葉は息せき切らしながら、その門をながめた。
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