ラズとリドの大冒険

大森かおり

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「ところで、あなたが今日ここへきたっていうことは、なにか、お届けものでもあるの?」
 ラズが、オーバルに尋ねた。
「ああ、今日は違うんだ」
 なぜか気まずそうに、オーバルが言った。
「本当は、ほかの仕事も、あったにはあったんだが、久しぶりに、ラズたちの顔を、見にきたくなってね」
 そう言うとオーバルは、鼻の下を、羽でかく振りをした。
 気まずくしていた理由は、どうやらそれが原因だったらしい。
 それがわかるとラズは、意外な答えに驚きながらも、
「そう。それはうれしいわ」と言って、オーバルがきてくれたことを、素直に喜んだ。
「ところでラズたち、次はどこへ行くんだい?」
 オーバルは話しながら、船のへりに降り立った。
「実はまだ、決めていないのよ」
 困った顔をしたラズが、そう答えると、
「さあ、次はどこへ行こうかしら」と言って、遠い海の向こうを見つめた。
「南の島へ、バカンスに行くなんてどう?」
 麦わら帽子に、サングラスをかけたダイアナが、ハイビスカスを飾りつけたブルーハワイのドリンクを持ち、空中で優雅に浮かびながら言った。
「あー、南の島? それ、とってもいい考えだとは思うんだけど、ちょっと違うわね」
 ラズが否定すると、ダイアナは、たちまち頬を膨らませて、ムッとした。
「オイラは、イチゴ畑に行きたいなあ」
 お次はネルーピーが、目を閉じながら、頭の中で想像を膨らませている様子で、そう言った。
「そしたら、イチゴの種が、やまほど食べられるだろう?」
 加えて、どうだと言わんばかりに、ネルーピーが言った。
「南の島にイチゴ畑?」
 突然、これまでなにも言わずに、ひたすら、魚が釣れるのを待っていたリドが、反応した。
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