ラズとリドの大冒険

大森かおり

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 あれから、一週間がたった。ムンダ村から、ずっと旅を続けていたラズたちは、いまだにビーランにとどまって、商売をしていた。(え? 治療のあと、ラビルがどうなったか知りたいって?)それじゃあ、教えよう。
 ラビルはあの後、マンディン先生とパイラの手によって、見事、元気に回復した。いまでは、まだゆっくりではあるけれど、海の中を、ボーイフレンドのスピロルと一緒に、すいすい泳ぎまわっている。
 このことからわかるように、ラズたちがビーランにとどまっている理由は、商売のためでもあるけれど、ラビルがある程度、元気になった姿を、見届けるためでもあった。
 実はマンディン先生とパイラも、いつもなら月に二回しか、ビーランにこないのだけれど、今回はほかの用事と、ラビルのためもあって、一週間に一回のペースで、きてくれているようだった。
 でも今日、ラズたちは、ラビルはもう大丈夫だとわかっているから、名残惜しくも、ビーランを旅立つ日になっていた。早々に店を閉めたラズたちは、死海の中にあるデュランズにいくために、いま、ビーランのみんなと最後の、お別れのあいさつをしているところだった。
「じゃあ、元気でな。スピロル、ラビル」
 リドが船の上から、海の中でこちらを見上げている、スピロルとラビルを見て言った。
「ああ、リドも元気で」
 スピロルが、笑顔で言った。
「ラズ、リド。あの時は、私のことを助けてくれて、本当にありがとう。あなたたちには、本当に、なんとお礼を言ったらいいか……」
 ラビルが、ラズたちに対する感謝の思いで、胸がいっぱいになっているかのように、言葉に詰まっていた。
「お礼なんて、別にいいのよ。あなたにはもう十分、何度もお礼を言ってもらったもの」
 おなじく船の上にいたラズが、ラビルたちを見下ろしながら言った。
「ああ、そうさ。そんなこと、気にしなくていいんだよ」
 ネルーピーが、ラズに続けて、そう言った。
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