193 / 387
9
23
しおりを挟む
スピロルを見ながら、確認するように、長老が尋ねた。
「そうです」
すぐにスピロルが答えた。
「そうかい」
そう言いながら、長老が、満足そうにうなずいた。
「安心しておくれ。いま見てやるからね。ちょっとの間だけ、待っていておくれ」
優しく、スピロルを落ち着かせるように、長老が言った。
「はい」
スピロルが言った。
すると長老が、まるでどこか遠くに行ってしまったかのように、自分一人の世界に入って、微動だにしなくなった。
ラズたちはそんな長老を、なにも言わずに、ただしずかに見守った。
まもなくして、長老が、
「うーん……ああ、そうか」と、突然、ひとりごとを言い出した。
「ほう……となると、これは……そうくるか……あらら、これはまた……」
長老は、険しい顔をして、止まることなく、ずっとしゃべりつづけている。
「ねえラズ、あの長老、どうしたの? 一体、なにが見えているの?」
たえまなくひとりごとを言っている長老を見て、ネルーピーが、けげんそうに、ラズに尋ねた。
「さあ、私には、なにもわからないわ」
目の前にいる長老の、その不思議な行動を見て、圧倒されながら、ラズが言った。
それからも、長老のひとりごとはつづいた。
一体いつ終わるのか、そろそろラズたちの気力も、限界に思われたころ、長老が突然、カッと、目を最大に見開いて、
「なんと……! これは、大変じゃ……くわばら、くわばら……」と、両手をこすり合わせながら言った。
「まさか、ラビルの身に、なにかあったんですか?」
いきなり様子の変わった長老を見て、スピロルが、心配そうにしながら、長老に尋ねた。
「しっ! しずかにして」
「そうです」
すぐにスピロルが答えた。
「そうかい」
そう言いながら、長老が、満足そうにうなずいた。
「安心しておくれ。いま見てやるからね。ちょっとの間だけ、待っていておくれ」
優しく、スピロルを落ち着かせるように、長老が言った。
「はい」
スピロルが言った。
すると長老が、まるでどこか遠くに行ってしまったかのように、自分一人の世界に入って、微動だにしなくなった。
ラズたちはそんな長老を、なにも言わずに、ただしずかに見守った。
まもなくして、長老が、
「うーん……ああ、そうか」と、突然、ひとりごとを言い出した。
「ほう……となると、これは……そうくるか……あらら、これはまた……」
長老は、険しい顔をして、止まることなく、ずっとしゃべりつづけている。
「ねえラズ、あの長老、どうしたの? 一体、なにが見えているの?」
たえまなくひとりごとを言っている長老を見て、ネルーピーが、けげんそうに、ラズに尋ねた。
「さあ、私には、なにもわからないわ」
目の前にいる長老の、その不思議な行動を見て、圧倒されながら、ラズが言った。
それからも、長老のひとりごとはつづいた。
一体いつ終わるのか、そろそろラズたちの気力も、限界に思われたころ、長老が突然、カッと、目を最大に見開いて、
「なんと……! これは、大変じゃ……くわばら、くわばら……」と、両手をこすり合わせながら言った。
「まさか、ラビルの身に、なにかあったんですか?」
いきなり様子の変わった長老を見て、スピロルが、心配そうにしながら、長老に尋ねた。
「しっ! しずかにして」
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
ローズお姉さまのドレス
有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。
いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。
話し方もお姉さまそっくり。
わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。
表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

お姫様の願い事
月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。
かつて聖女は悪女と呼ばれていた
楪巴 (ゆずりは)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」
この聖女、悪女よりもタチが悪い!?
悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!!
聖女が華麗にざまぁします♪
※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨
※ 悪女視点と聖女視点があります。
※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。
桐山一茶
児童書・童話
雨が降り注ぐ夜の山に、捨てられてしまった双子の姉妹が居ました。
山の中には恐ろしい魔物が出るので、幼い少女の力では山の中で生きていく事なんか出来ません。
そんな中、双子姉妹の目の前に全身黒ずくめの女の人が現れました。
するとその人は優しい声で言いました。
「私は目が見えません。だから手を繋ぎましょう」
その言葉をきっかけに、3人は仲良く暮らし始めたそうなのですが――。
(この作品はほぼ毎日更新です)
守護霊のお仕事なんて出来ません!
柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。
死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。
そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。
助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。
・守護霊代行の仕事を手伝うか。
・死亡手続きを進められるか。
究極の選択を迫られた未蘭。
守護霊代行の仕事を引き受けることに。
人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。
「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」
話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎
ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる