ラズとリドの大冒険

大森かおり

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 スピロルを見ながら、確認するように、長老が尋ねた。
「そうです」
 すぐにスピロルが答えた。
「そうかい」
 そう言いながら、長老が、満足そうにうなずいた。
「安心しておくれ。いま見てやるからね。ちょっとの間だけ、待っていておくれ」
 優しく、スピロルを落ち着かせるように、長老が言った。
「はい」
 スピロルが言った。
 すると長老が、まるでどこか遠くに行ってしまったかのように、自分一人の世界に入って、微動だにしなくなった。
 ラズたちはそんな長老を、なにも言わずに、ただしずかに見守った。
 まもなくして、長老が、
「うーん……ああ、そうか」と、突然、ひとりごとを言い出した。
「ほう……となると、これは……そうくるか……あらら、これはまた……」
 長老は、険しい顔をして、止まることなく、ずっとしゃべりつづけている。
「ねえラズ、あの長老、どうしたの? 一体、なにが見えているの?」
 たえまなくひとりごとを言っている長老を見て、ネルーピーが、けげんそうに、ラズに尋ねた。
「さあ、私には、なにもわからないわ」
 目の前にいる長老の、その不思議な行動を見て、圧倒されながら、ラズが言った。
 それからも、長老のひとりごとはつづいた。
 一体いつ終わるのか、そろそろラズたちの気力も、限界に思われたころ、長老が突然、カッと、目を最大に見開いて、
「なんと……! これは、大変じゃ……くわばら、くわばら……」と、両手をこすり合わせながら言った。
「まさか、ラビルの身に、なにかあったんですか?」
 いきなり様子の変わった長老を見て、スピロルが、心配そうにしながら、長老に尋ねた。
「しっ! しずかにして」
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