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「うん」
イルカが頷いた。
「僕、名前はスピロルっていうんだけど、ついさっきまで一緒にいた、ガールフレンドのラビルっていう子と、ここらの海で、はぐれてしまったんだよ」
悲しそうに、スピロルが言った。
「まあ、それは大変」
できるだけ親身になって、スピロルのことを心配しながら、ラズが言った。
「その、ラビルっていう子は、一体、どんな見た目をしているの?」
ラズがそう聞くと、
「ラビル? すっごくかわいいよ。まず、肌がつるつるしてる。それに笑うと、小さくてきれいな歯が見えて、まるで天使みたいなんだ。僕にとったら、世界で一番かわいい、最高の女の子さ」と、自慢げにスピロルが言った。
どうやらスピロルは、そのガールフレンドのラビルのことを、誰よりも愛しているようだった。
「そう。いまの話を聞いて、あなたがそのラビルっていう子のことが、どれだけ好きなのか、よくわかったわ」
ラズが言った。
「でも、私には、それを教えてもらっても、どれが本物のラビルなのか、きっと一目見ただけでは、わからないと思うの。だから、もっと別の、ほかのイルカとの、わかりやすいちがいを教えてくれない?」
「わかった」
スピロルが言った。
「でも、一口にちがいって言っても、実は、僕とほとんどおなじなんだよ。ただ、ここらでイルカは少ないから、女の子だとわかりさえすれば、その子は僕のガールフレンドの、ラビルでまちがいないと思う」
そう言うと、なぜかスピロルは、胸びれを使って、海面をバシャバシャと、はげしく叩いた。
「そうだ、イルカの女の子と、男の子のちがいを教えようか?」
ラズは、スピロルが海面を叩いて上げた、つめたい水しぶきが、自分にかからないように顔を手でおおい、片目をつむりながら、
「ええ、お願い」と、スピロルを見て言った。
イルカが頷いた。
「僕、名前はスピロルっていうんだけど、ついさっきまで一緒にいた、ガールフレンドのラビルっていう子と、ここらの海で、はぐれてしまったんだよ」
悲しそうに、スピロルが言った。
「まあ、それは大変」
できるだけ親身になって、スピロルのことを心配しながら、ラズが言った。
「その、ラビルっていう子は、一体、どんな見た目をしているの?」
ラズがそう聞くと、
「ラビル? すっごくかわいいよ。まず、肌がつるつるしてる。それに笑うと、小さくてきれいな歯が見えて、まるで天使みたいなんだ。僕にとったら、世界で一番かわいい、最高の女の子さ」と、自慢げにスピロルが言った。
どうやらスピロルは、そのガールフレンドのラビルのことを、誰よりも愛しているようだった。
「そう。いまの話を聞いて、あなたがそのラビルっていう子のことが、どれだけ好きなのか、よくわかったわ」
ラズが言った。
「でも、私には、それを教えてもらっても、どれが本物のラビルなのか、きっと一目見ただけでは、わからないと思うの。だから、もっと別の、ほかのイルカとの、わかりやすいちがいを教えてくれない?」
「わかった」
スピロルが言った。
「でも、一口にちがいって言っても、実は、僕とほとんどおなじなんだよ。ただ、ここらでイルカは少ないから、女の子だとわかりさえすれば、その子は僕のガールフレンドの、ラビルでまちがいないと思う」
そう言うと、なぜかスピロルは、胸びれを使って、海面をバシャバシャと、はげしく叩いた。
「そうだ、イルカの女の子と、男の子のちがいを教えようか?」
ラズは、スピロルが海面を叩いて上げた、つめたい水しぶきが、自分にかからないように顔を手でおおい、片目をつむりながら、
「ええ、お願い」と、スピロルを見て言った。
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