ラズとリドの大冒険

大森かおり

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 ヨールおじいちゃんは、口をぽかんと開けたまま、リドの話を聞いて、
「まあ、それも、そうか……」と、ついに返す言葉もなくなって、言い淀んだ。
「そうさ」
 そう言うと、リドはラズを見て、
「ラズだってそう思うだろ?」と言った。
「だって、ずっと冒険に出たいんだって、言っていたじゃないか。なら、今すぐ、行くべきだろう」
「まあ、リド……」
 ラズは、あの厳格なヨールおじいちゃんを前にして、勇敢な物言いをしながら、自分のために立ち向かっていくリドに対して、胸がいっぱいになった。
「でも、本当に、そんなこと、いいのかしら」
 遠慮がちにラズが言った。
「なにを今さら、そんなにためらっているんだ?」
 けげんそうに、リドが言った。
「これで、ずっと願っていたお前の夢が叶うんだぞ。それなのに、ここでためらう必要なんて、一切ないだろ」
「それも、そうね……」
 そう言うと、ラズは不安な顔つきをして、ヨールおじいちゃんを見た。
「でも、ヨールおじいちゃん、私、本当に、冒険に行っても、いいのかしら?」
「まあ、もう、こうなれば、ダメだというわけにも、いかんじゃろう……」
 とうとう、あの頑固なヨールおじいちゃんは、ラズとリドの熱心さに負けて、折れたようだった。
「うそ! まあ、それ、本当⁉︎」
 ラズは、自分が今、眠っていて、本当の夢を見ているんじゃないかと思うほど、驚いた。
「あの頑固なヨールおじいちゃんが、私が冒険に行くことを許してくれたんだわ! 信じられない!」
「ラズ、少し落ち着きなさい」
 ヨールおじいちゃんが、ラズをなだめた。
「落ち着くなんて、無理よ!」
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