ルーカスと呪われた遊園地（中）

６ 乙葉大ピンチ

２８

　気の毒に思ったのか、やさしく京一が言った。
「でも、もうすぐでこの動きも止まるはずだ」
「え⁉︎　なんて⁉︎」
　またしても京一の声が聞こえずに、乙葉が聞き返した。
「なんでもない！」
　京一はそう叫ぶと、トランシーバーを口元に近づけた。
「久遠、聞こえるか？」
『はい、聞こえます』
　すぐに久遠が返事をした。
　車両の前方では乙葉が、
「もう、なにもないなら、こんな時に話しかけないでよ！」と、一人で悪態をついていた。
　京一はそんな乙葉を無視し、
「坂道は終わった。あとはカーブだけだ。もうすぐでこわれたレールの上にさしかかる。だから、止めるならいまだ。やってくれ」と、久遠に言った。
『わかりました、絶対に止めてみせます。僕にまかせてください』
　頼もしく久遠が答えた。
　それから間もなくして、車両は徐々にスピードを落としていった。
「あら？　おそくなってる……」
　異変に気づいた乙葉が、おどろいたように、まわりの景色を見て言った。
「いいぞ、久遠」
　乙葉の後ろで、京一が熱を込めて言った。
　京一と久遠の計画のことなどなにも知らなかった乙葉でも、これはきっと操作室で、久遠が止めているにちがいないと思った。
　この時、乙葉の酔いは完全に覚めていた。
「ああっ、でも、もうすぐでレールが途切れちゃう！」
　前方の、レールがこわれている箇所を見て、乙葉がうめいた。
　途切れたレールまで、あと十メートルほどの距離しか空いていない。いくらスピードが落ちているとは言え、間に合う保証はない。
「久遠、頼む。落ちる前に止めてくれ」
　祈るように京一が言った。