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6 乙葉大ピンチ
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ひどく動揺した柚子は、あちこち目をこらして車両を探した。
「あの坂道だよ。まだ距離がある」
坂道を猛スピードで下っている車両に向かって、内田が指をさしながら教えた。
柚子はすぐに、内田が指さす方向を見て、
「お姉ちゃん!」と、大きな声で言った。
乙葉を乗せた車両は、こわれたレールを目指して、着実に進んでいる。その様子を見た柚子は途端に肝を冷やし、一瞬だけ、まともに息ができなくなった。
「はやくなんとかしないと! このまま放っておいたら、レールの下に落っこちちゃう」
しかし、こんな状況で一体、なにができるというのだろうか。唯一、空中を自由に飛べるルーカスを、柚子たちで説得できなかった上に、この危機を乗り越える方法も、いまだに見つかってはいないのだ。なんとかしなければとは思っても、なにもできない自分が無力だと感じ、柚子は途方に暮れたまま、悲しくなるばかりだった。
「なあ」
目を細めて、車両をじっと見ている銀司が言った。
「なんか、よく見たらあの姉ちゃんだけじゃなくて、眼鏡かけてない方の兄ちゃんも、一緒に乗ってねえか?」
「本当だ、京一くんも一緒に乗ってる」
内田はおどろいたように、目をパチパチさせて、動く車両を見つめて言った。
「きっと乙葉ちゃんを助け出そうとして、車両に乗り込んだにちがいないよ」
「どうしよう。このままじゃ、お姉ちゃんと京一くん、どっちも死んじゃう……」
先のことを心配して、柚子は悲しげに目をうるませた。
「泣かないで、柚子ちゃん」
同情した内田が、とっさに柚子に近づき、柚子の背中に手を当ててなぐさめた。
柚子の目に溜まった涙は、次から次へと流れ、ついにはしゃくり上げて泣きはじめた。
「泣かないなんて、無理よ。だって、二人が死ぬところを見てるだけで、私にはほかに、なにもできないんだから……」
とうとう柚子はひざから崩れ落ち、ただ泣くことしかできなくなった。
そんな柚子を見て、銀司はうろたえ、どうしたらよいかわからないと言った様子で、
「おいおい、泣くなんて、いつもの気の強い嬢ちゃんらしくねえな」と言い、頭をかいた。
「そうだよ、柚子ちゃん。泣いたら、君の可愛い顔が台無しだよ」
「あの坂道だよ。まだ距離がある」
坂道を猛スピードで下っている車両に向かって、内田が指をさしながら教えた。
柚子はすぐに、内田が指さす方向を見て、
「お姉ちゃん!」と、大きな声で言った。
乙葉を乗せた車両は、こわれたレールを目指して、着実に進んでいる。その様子を見た柚子は途端に肝を冷やし、一瞬だけ、まともに息ができなくなった。
「はやくなんとかしないと! このまま放っておいたら、レールの下に落っこちちゃう」
しかし、こんな状況で一体、なにができるというのだろうか。唯一、空中を自由に飛べるルーカスを、柚子たちで説得できなかった上に、この危機を乗り越える方法も、いまだに見つかってはいないのだ。なんとかしなければとは思っても、なにもできない自分が無力だと感じ、柚子は途方に暮れたまま、悲しくなるばかりだった。
「なあ」
目を細めて、車両をじっと見ている銀司が言った。
「なんか、よく見たらあの姉ちゃんだけじゃなくて、眼鏡かけてない方の兄ちゃんも、一緒に乗ってねえか?」
「本当だ、京一くんも一緒に乗ってる」
内田はおどろいたように、目をパチパチさせて、動く車両を見つめて言った。
「きっと乙葉ちゃんを助け出そうとして、車両に乗り込んだにちがいないよ」
「どうしよう。このままじゃ、お姉ちゃんと京一くん、どっちも死んじゃう……」
先のことを心配して、柚子は悲しげに目をうるませた。
「泣かないで、柚子ちゃん」
同情した内田が、とっさに柚子に近づき、柚子の背中に手を当ててなぐさめた。
柚子の目に溜まった涙は、次から次へと流れ、ついにはしゃくり上げて泣きはじめた。
「泣かないなんて、無理よ。だって、二人が死ぬところを見てるだけで、私にはほかに、なにもできないんだから……」
とうとう柚子はひざから崩れ落ち、ただ泣くことしかできなくなった。
そんな柚子を見て、銀司はうろたえ、どうしたらよいかわからないと言った様子で、
「おいおい、泣くなんて、いつもの気の強い嬢ちゃんらしくねえな」と言い、頭をかいた。
「そうだよ、柚子ちゃん。泣いたら、君の可愛い顔が台無しだよ」
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