ルーカスと呪われた遊園地（中）

６ 乙葉大ピンチ

１７

　意外な事実に感心しながら、久遠が言った。
「で、なにが心配するな、なんですか？」
　京一はすぐにはなにも言わなかった。いうのをためらっているように思えた久遠は、我慢ならずに、
「ひょっとして僕が操作したから、この爆発する装置は、もう二度と作動したりしないってことですか？」と言った。
『いや、そういうことじゃない』
　京一が即答した。
『その装置はボタンを押せば作動する。でも、止める方法がひとつだけあるんだ。その方法は、装置の後ろについている二本の赤い線と青い線のどちらかを切ることだ』
「それ、前になにかのテレビで見たことありますよ……」
　呆れながら久遠が言った。
「そんな危険なこと、もしかして、僕にやらせようとしてるんですか？」
『よくわかったな』
　開き直ったように京一が言った。
「だからすぐには言わなかったんですね……」
　謎が解けた久遠は、すっきりしたけど、むしろ危険なことをやらないといけないという事実から、重たい石がどすんと体にのしかかったような息苦しい気持ちになった。
「心配するなって言っておきながら、実際は心配大ありじゃないですか」
　久遠は顔をしかめた。
『お前、さっき四人全員の命を救っただろ？　だから、次もうまくいくんじゃないかと思ってな。そんなわけで、頼む。危険を承知の上で、線を切ってくれないか』
　その時、レールの上を歩きながら、操作室にいる久遠に向かって、礼をしている京一の姿が久遠の頭に思い浮かんだ。
　久遠はとっさに首を横に振ると、
「無理ですよ！　さっきは操作に自信があったから名乗り出ましたけど、どちらかの線を選んで切らないといけないなんて、そんな運試しみたいなことは、とてもじゃないですけど、僕にはできません」と言った。
「だからルーカスさんが助けにくるまで、おとなしく待ちましょうよ！」
『そうか。まあ、無理にとは言わない。でも、このままだと、ジェットコースターに乗ることだけをかたくなに断ったあのルーカスのことだ、本当にこちらにきて助けにくるかはわからない。それに、いま動いている車両も、俺たちがレールを爆発させるより先に、何者かが爆発させてしまうかもしれない。そうなったら、なにも抵抗できない乙葉は——可哀想に、死んでしまうかもしれないな……』