ルーカスと呪われた遊園地（中）

６ 乙葉大ピンチ

１０

「こんなところに人がいる……？」
　乙葉はとっさに、自分の目がおかしくなってしまったのではないかと思いながら、両目を手でこすった。
　しかし、目をこすっても目の前には人影が見える。乙葉はジェットコースターを三回連続で乗ることによって、目だけではなく、とうとう頭までもが変になってしまったのではないかと思い、そんな自分のことを心配した。
「もう、私ったら、こんなレールの上なんかに人がいるわけないじゃない」
　自分が思っていることがバカらしくなって、乙葉は思わず笑った。
「まったく、はやくこれ止まらないかしら。じゃないと私の頭、このままだともっとおかしくなりそう」
　それから距離が人影と近づくにつれ、その姿がだんだんとあらわになっていった。
　そして、ついにそれが京一だとわかった時には、乙葉は目の玉が飛び出そうなくらいにおどろいた。
「きょ、京一ー⁉︎」
　大声で乙葉が言った。
「なんであんなところで歩いてるの？　もしかして私を助けるため？　なんにしても、いくらなんでも危険すぎるわ！」
　京一はそんな乙葉の気も知らずに、久遠と同じトランシーバーを持って、なにやら冷静に話し込んでいるようだった。
「こんな時まで冷静にしてる場合じゃないわよ、はやく安全な場所に戻って！」
　青ざめた顔で乙葉が言った。
　やがて、車両は京一に追いつき、顔がよく見える地点にまでたどり着いた。その時にはすでに頂上にきていて、Ｕ字型のカーブを曲がるところまで来ていた。
「乙葉、お前やっときたな」
　そう言うと、京一は動いているジェットコースターに飛び乗った。
「えっ⁉︎」
　乙葉がおどろいて後ろを見ると、三列くらい後ろで、京一が車両に立ちながら乗っているのが見えた。
「京一、あなたなにやってるの⁉︎」