ルーカスと呪われた遊園地(中)

大森かおり

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6 乙葉大ピンチ

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 ルーカスを呼びに走っていった柚子は、ジェットコースターの出口から出て、急いで小屋に向かう途中だった。
「お姉ちゃん、どうか私が戻ってくるまで、無事でいて!」
 走りながら柚子は、いまだにジェットコースターに乗って叫んでいる乙葉に向かって、そう言った。
 しばらく息を切らしながら走っていると、途中にあったトイレの建物のすぐ外で、身に覚えのある人物が立っているのが目に入った。そもそも、この遊園地にいる人はかぎられているから、考えればすぐにわかることなのだけど、柚子はいま、乙葉のことで頭が一杯で、それが誰だかなんて、考える必要もなければ知る必要もなく、もはやどうでもよいことだと思った。
 しかし、近づいてあらためて見ると、それはタバコを吸っている銀司だということがわかった。
 柚子はこんな大事な時に、なにも知らないあいつが、のんきにひとりでタバコを吸っていると思ったら急に腹立たしくなり、無視して走り去ることにした。
「あ、おい、嬢ちゃんじぇねえか」
 柚子がかかわらないでおこうと思っていたにもかかわらず、予想外にも、銀司の方からなれなれしく話しかけてきた。
「さっきは大人気なくて悪かったな。すまなかったぜ。俺の方からこのとおり、どうか許してくれ!」
 銀司は止まらず走っている柚子に向かって頭を下げたが、柚子は当初の予定通り、銀司を無視して去った。
「おい、なにも無視することはねえだろ? 人が誠心誠意、あやまってんだからさあ」
 頭を上げた銀司が、まっしぐらに前に進んでいく柚子に向かって言った。
 柚子は相変わらず銀司のことを無視した。
 やがて銀司の声が聞こえなくなるところまできて、これでもう邪魔者はいなくなったと安心した柚子だったが、突如、後ろからものすごい足音が聞こえてきた。柚子は何事だとおどろいて、思わず後ろを振り向いた。
「ちょっと! なに追いかけてきてんのよ!」
 おこった柚子が、後ろで走っている銀司に向かって言った。
「つれねえなあ。ちょっと言い合いになっただけだってのに」
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