ルーカスと呪われた遊園地(中)

大森かおり

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5 地獄行きジェットコースター

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「ねえ、それじゃあ、窓ガラスをさ、ここに置いてある椅子で、叩き割ってみない?」
「それ、いい考え!」
 人さし指を立てた柚子が言った。
「わかった。じゃあ俺がやってみよう」
 体当たりをした直後だったにもかかわらず、京一が名乗り出た。
「京一、大丈夫なの?」
「休憩してからの方がいいんじゃない?」
 乙葉と柚子が口々に、京一に向かって、心配の言葉を述べた。
「いや、俺のことは平気だから気にするな。それよりも、はやくここから抜け出して、ことをすすめたい」
 その言葉通り、京一は汗もかかず、息も切らしておらず、まったく平気そうに見えた。相変わらずストイックな京一に、乙葉はただおどろくばかりだった。
「みんな、俺から十分に離れていろよ」
 すると、ほかの全員は京一に言われたとおり、京一から十分に距離をとって、はなれた。
 そこで京一は、台の前に置いてあった椅子を両手で一脚いっきゃくつかむと、窓ガラス目がけて、振り下ろす姿勢をとった。
「気をつけてね、京一くん」
 不安そうに柚子が言った。
「京一、ケガだけはしないでね」
 続けて乙葉が注意した。
 ようやく息切れがおさまった久遠も、京一を心配と期待の入り交じった目で見た。
 京一はなにも言わなかったが、いくらか窓を見つめたあと、椅子を両手で持ったまま、思い切り力を込めて、振り下ろした。すると、椅子が窓ガラスにぶつかるガシャンッという大きな音がした。しかし、窓ガラスは擦り傷一つさえついていなかった。
「なんだ、これ。まるで防弾ガラスでも使っているのかってくらい硬いぞ」
 椅子を地面に下ろしながら、京一が言った。
「京一くんの力を使っても割れないガラスなんて、よほど硬いガラスなんでしょうね」
 呆気にとられた様子の久遠が言った。
 柚子は肩を落とすと、
「はあ、やっと出られると思ったのに」と言った。
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