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5 地獄行きジェットコースター
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乙葉はこの説明文を読んで、思わず息を呑んだ。
「このジェットコースター、なんだかすごそうね」
「私、こんなの絶対にムリよ! やっぱり、鍵探しなんてやめるわ」
自身の体を抱きしめ、足をすくませながら、柚子がそう言った。
久遠は絶叫系が苦手というわりには、柚子ほど取り乱してはいないようだ。
「だから、今回は乗らないんだって。何回言ったらわかるんだよ」
京一は心底、柚子に呆れた様子だ。
「それはわかってるけど」
いまにも泣き出しそうな声で、柚子が言った。
「それほどまでに行きたくないんだったら、別に無理していかなくてもいいんだぞ」
柚子をなだめるように、京一が言った。
「なんですって? いいえ、いくわ。いかせてもらいます」
置いていかれるのがよほどいやなのか、柚子はこわがっていた顔から、すぐにきりっとした顔に変わり、すこし無理をするように言った。
「そうか、わかった。それじゃ、先に進むか」
京一はそう言うと、先に立って、目の前にある、長い長い折り返し階段を上って、いきはじめた。残りの三人も京一のあとに続いて、ぞろぞろと階段を上り出した。
階段を上る最中、京一は階段をよく観察しながら、歩いていた。
どこにでもあるただの階段なのに、どうしてそんなによく見る必要があるのか、乙葉は疑問に思った。
「ねえ、なんでそんなに、階段を確認しながら歩いてるの?」
いぶかりながら、乙葉が聞いた。
「安全のためだ。どこかに穴が開いてこわれているかもしれないし、もしくは、床が濡れて滑りやすくなっているかもしれないだろ? ほら、ゴーカートの時みたいに。怪我したら元も子もないからな」
相変わらず自分の足元を注意深く見ながら、京一が答えた。
「それと鍵探し。乗り場だけじゃなくて、ほかの場所も念入りに探しといて、損はない」
「そ、そうだったの……」
まさかこんな時まで鍵探しをしているとは思わず、乙葉は面食らった。それに、皆のためを思って、階段の点検までしてくれていたなんて、本当に京一には頭が上がらない。
「このジェットコースター、なんだかすごそうね」
「私、こんなの絶対にムリよ! やっぱり、鍵探しなんてやめるわ」
自身の体を抱きしめ、足をすくませながら、柚子がそう言った。
久遠は絶叫系が苦手というわりには、柚子ほど取り乱してはいないようだ。
「だから、今回は乗らないんだって。何回言ったらわかるんだよ」
京一は心底、柚子に呆れた様子だ。
「それはわかってるけど」
いまにも泣き出しそうな声で、柚子が言った。
「それほどまでに行きたくないんだったら、別に無理していかなくてもいいんだぞ」
柚子をなだめるように、京一が言った。
「なんですって? いいえ、いくわ。いかせてもらいます」
置いていかれるのがよほどいやなのか、柚子はこわがっていた顔から、すぐにきりっとした顔に変わり、すこし無理をするように言った。
「そうか、わかった。それじゃ、先に進むか」
京一はそう言うと、先に立って、目の前にある、長い長い折り返し階段を上って、いきはじめた。残りの三人も京一のあとに続いて、ぞろぞろと階段を上り出した。
階段を上る最中、京一は階段をよく観察しながら、歩いていた。
どこにでもあるただの階段なのに、どうしてそんなによく見る必要があるのか、乙葉は疑問に思った。
「ねえ、なんでそんなに、階段を確認しながら歩いてるの?」
いぶかりながら、乙葉が聞いた。
「安全のためだ。どこかに穴が開いてこわれているかもしれないし、もしくは、床が濡れて滑りやすくなっているかもしれないだろ? ほら、ゴーカートの時みたいに。怪我したら元も子もないからな」
相変わらず自分の足元を注意深く見ながら、京一が答えた。
「それと鍵探し。乗り場だけじゃなくて、ほかの場所も念入りに探しといて、損はない」
「そ、そうだったの……」
まさかこんな時まで鍵探しをしているとは思わず、乙葉は面食らった。それに、皆のためを思って、階段の点検までしてくれていたなんて、本当に京一には頭が上がらない。
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