ルーカスと呪われた遊園地（中）

５ 地獄行きジェットコースター

１９

「え？  あのルーカスが？」
　驚愕きょうがくした柚子が、口を押さえながら言った。
「いつでもどこでも、必ずついてきたがる、あのルーカスが？」
　ほかの皆も、なんとなくいつもより元気がないように見えるルーカスを前にして、おどろきつつも、心配そうな顔をしていた。
「大丈夫？ ルーカス。もしかして具合悪いの？」
　乙葉が気づかいながら尋ねた。
「ううん、そんなことないけど」
　即座にルーカスが否定した。
「わかった！　ひょっとして、ルーカスも私と一緒で、ジェットコースター苦手なんでしょ？」
　柚子が絶対そうだと言わんばかりに、前のめりになって言った。
「別に、そういうわけじゃないけど」
　ふし目がちに、ルーカスが言った。
「ええ？　じゃあなんで？」
　素っ頓狂な顔をして、柚子が尋ねた。
「見張り必要なんでしょ？  だから、僕がなるよ」
　ルーカスは、なぜか柚子の質問には触れずに、そう言った。
　それを聞いた京一は、間髪かんぱつ入れずに、
「わかった。じゃあ、ルーカスは見張り役で決定だ」と言った。
「そんな、いつもなら必ずついてくるのに……」
　不安な気持ちが乙葉の心に、もやっと広がっていくような感じがした。具合が悪いのではなく、ジェットコースターも苦手じゃないのなら、どうしてルーカスは、ついてきたがらないのだろうか。
「まあ、本人がいいっていうなら、いいんじゃない？」
　柚子が、乙葉を納得させるように言った。
「それはそうだけど……」
　まだ腑ふに落ちなかった乙葉は、思わず言葉に詰まった。
　あるのは不安な気持ちだけじゃない。なぜだかいやな予感までするのだ。それはまるで黒い渦うずのように、乙葉の体の中を埋め尽くしていくような、そんな感覚がする。