ルーカスと呪われた遊園地(中)

大森かおり

文字の大きさ
上 下
130 / 244
4 財宝強盗

10

しおりを挟む
「それと、ここから出る方法も、なにか知っていたら教えろ」
「まあ、教えろだなんて。そんな言い方じゃ、とても人にものを頼む態度とは思えないわね。それにそんなこと、私たちにお願いせずに、自分たちで勝手に財宝を探して、勝手に出ていけばいいじゃない」
 大きな声で柚子が反抗した。
「いいや、それはできねえな。財宝はともかく、一旦、この園内から柵を登って出ようとしたら、俺たちは見えないバリアみたいなもので、弾き飛ばされちまったんだ。しかも、どこから逃げようとしても、すべておなじ結果に終わった」
 別の男が言った。
「本当おかしい話だよ、この遊園地はなにもかも狂ってやがる」
 また別の男が、お手上げだというように言った。
「ああ、そりゃそうでしょうね」
 柚子が投げやりになって言った。
「財宝のある場所なんて俺は知らない。出る方法は、たとえ知っていても、お前たちなんかに教える必要はないと思ってる」
 挑むように京一が言った。
「なんだと?」
 男は信じられないとでもいうような顔をして、久遠のシャツの襟をつかんだ。
「こいつがどうなってもいいっていうのか?」
 襟をつかまれている久遠は、男をにらみつけている。
「そうじゃない」
 京一はそう言うと、にやりと笑った。
「お前たちを倒せばいいだけの話だ」
「おうおう、言ってくれるわ。ただの小僧が」
 久遠の襟を手荒くはなすと、男は両手をかさねて、ポキポキ鳴らし出した。
「お前ら、やっちまえ」
「おう!」
 すると、京一たった一人に、背後にいた男が二人、大人気ない人数で飛びかかっていった。
 その瞬間、京一はひじを使って、そのうちの一人の腹に強打させた。京一に腹をやられたその男は、目を見開き、口をだらしなく開けたまま、唾を吐き出したかと思うと、床に尻もちをついた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。

桐山一茶
児童書・童話
雨が降り注ぐ夜の山に、捨てられてしまった双子の姉妹が居ました。 山の中には恐ろしい魔物が出るので、幼い少女の力では山の中で生きていく事なんか出来ません。 そんな中、双子姉妹の目の前に全身黒ずくめの女の人が現れました。 するとその人は優しい声で言いました。 「私は目が見えません。だから手を繋ぎましょう」 その言葉をきっかけに、3人は仲良く暮らし始めたそうなのですが――。 (この作品はほぼ毎日更新です)

夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~

世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。 友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。 ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。 だが、彼らはまだ知らなかった。 ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。 敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。 果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか? 8月中、ほぼ毎日更新予定です。 (※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

鎌倉西小学校ミステリー倶楽部

澤田慎梧
児童書・童話
【「鎌倉猫ヶ丘小ミステリー倶楽部」に改題して、アルファポリスきずな文庫より好評発売中!】 https://kizuna.alphapolis.co.jp/book/11230 【「第1回きずな児童書大賞」にて、「謎解きユニーク探偵賞」を受賞】 市立「鎌倉西小学校」には不思議な部活がある。その名も「ミステリー倶楽部」。なんでも、「学校の怪談」の正体を、鮮やかに解明してくれるのだとか……。 学校の中で怪奇現象を目撃したら、ぜひとも「ミステリー倶楽部」に相談することをオススメする。 案外、つまらない勘違いが原因かもしれないから。 ……本物の「お化け」や「妖怪」が出てくる前に、相談しに行こう。 ※本作品は小学校高学年以上を想定しています。作中の漢字には、ふりがなが多く振ってあります。 ※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。 ※本作品は、三人の主人公を描いた連作短編です。誰を主軸にするかで、ジャンルが少し変化します。 ※カクヨムさんにも投稿しています(初出:2020年8月1日)

弟は、お人形さんになりました

るい
絵本
あるところに、お母さん、お父さん、お兄ちゃん、弟くんの4人で出来た、ごく普通の家庭がありました。 この家族は貧しくもなければ潤沢な訳でもなく、ごくごく普通の家庭でした。 お母さんは優しいし、お父さんはサラリーマン、お兄ちゃんはたくましい。 でも弟くんは、お人形さん。 【注】このお話は少しホラーテイストになっております。苦手な方は十分注意の上閲覧ください。

共に生きるため

Emi 松原
児童書・童話
高校生の時に書いた初の長編作品です。 妖精もののファンタジーです。小学生の少女はとある妖精と出会い、妖精の国に行きます。 そこで起こるドタバタな出来事を書いています。

ゆきじかん

夢ノ命
児童書・童話
雪の日の時間がゆっくり流れていく感覚、マキオはそれを【ゆきじかん】と呼んでいました。そんな雪の日のある朝……

絵本 ふるる(文のみ)

福守りん
絵本
ふるる、ふわわ、ふわりん……。 こどもたちがだいすきな、しゃぼんだまのおはなし。 ※絵本を想定した文です。表紙以外の絵はありません。

処理中です...