ルーカスと呪われた遊園地（中）

４ 財宝強盗

７

　声を聞いて、立ち止まった乙葉が言った。
「いま、絶対になにか聞こえたと思うんだけど、私だけじゃないわよね？」
「ええ、私も聞こえたわ」
　柚子も立ち止まり、口を押さえながら、衝撃を受けたような顔をして言った。
　ルーカスは異変を感じたのか、空から急降下してくると、
「うん、僕も聞こえた！」と言った。
「だよね、悲鳴だったよ」
　内田が目を見開きながら、おどろいた様子で言った。
「なにがあったの？」
「小屋からだ。久遠にまちがいない」
　冷静に京一が言った。
「大変！　はやくもどって助けにいかなきゃ」
　焦りながら乙葉が言った。
　この時、乙葉の心臓は、激しいくらいにうるさく鳴っていた。これで大切な友達、久遠になにかあったら、とても平常心ではいられない。
「みんな、急げ！」
　京一がまた、先頭に立って走りはじめた。続いて、ほかのみんなも急いで走った。
（久遠くん、どうか無事であって！）
　小屋はもう目前だ。
　そして、ついに京一が、小屋の扉を勢いよく開けて入った。
「久遠！　無事かっ」
　小屋の中を見ると、その状況は、思わず目をつむってしまいたくなるほど、惨憺さんたんたる有り様だった。
　いつも小屋の中央に置かれていたテーブルは、勝手に窓のそばにどかされていたし、仕切りなどの家具は、いくつか床になぎ倒されていた。さらに空いたスペースには、久遠が、見知らぬ男のとなりで、ロープで手を拘束こうそくされた状態で、ひざまずいていた。その上、久遠は必死な形相をしながら、猿ぐつわでふさがれた口から、乙葉たちになにかを伝えようと、
「んー！」と言いながら、身動きをしてこちらを見ていた。
「よお」
　男が、扉の中にいる京一と、外にいる乙葉たちを見ながら、つめたく気どった声を出した。