ルーカスと呪われた遊園地(中)

大森かおり

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3 隠し部屋

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「えっ、ちょっと、ルーカス!」
 置いていかれた乙葉は、ルーカスを呼び止めようと、声を上げた。
 しかし残念ながら、ルーカスに、その声は届かなかったようだ。動きを止めることなく、どんどん先へと進んでいっている。
 それを見た乙葉は仕方なく、こわがりながらも、ルーカスのあとをついていくことにした。
 一段一段踏みしめるたびに、小さな石が、靴の下で擦れる音がする。コンクリートで固められた壁を支えにして、乙葉は下の石段を見ながら、注意深くゆっくりと階段を下りた。幸い、乙葉が心配していたコウモリのような動物は、一匹もいなかったため、一安心した。
 ふと前を見ると、ルーカスの姿は、すでに暗闇の中に消えていた。
 不安と恐怖の中、乙葉は慎重に、階段を下りることだけを考えて、前へと進んだ。
 やっとのことで、一番下の石段を下りると、白くて金色の、美しい模様のある扉があらわれた。しかもその扉の上には、ナイトの絵が描かれている。これまで下ってきた階段がとても不気味だったため、こんな気品のある扉が目の前にあることが、乙葉には信じられなかった。
 ルーカスはこの扉の中にいるのだろうか。そう思った乙葉は、早速、取手に手をかけて、扉を開けた。
 その瞬間、乙葉の顔に、まぶしい光が浴びせられた。乙葉は耐えられずに、一瞬だけ目をつむった。
「なにやってるの、乙葉。遅いじゃん」
 中を見て早々、ルーカスが待ちくたびれたように言った。
 乙葉はルーカスのいうことよりも、部屋の中に感動して、目を輝かせていた。
「うわあ……」
 うっとりしながら乙葉が言った。
「すごいわ、こんな場所があったのね」
 扉の向こうは、クリスタルガラスを使った、シャンデリアによる明かりがついていて、貴族が住むような、豪華な部屋になっていた。壁には高そうな絵が何枚も飾られていたり、たくさんの本がぎっしりと並べられている本棚があったり、古くていい値がつきそうな骨董品が、いくつもコレクションされている棚などが、整然と置かれていた。そして床を見ると、色鮮やかなペルシャ絨毯が敷かれ、不思議なことにほこり一つとしてなかった。極めつきに、その絨毯の上には、ふかふかなソファやテーブル、グランドピアノなどがバランスよく配置されている。とても小綺麗な部屋だと乙葉は思った。
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