ルーカスと呪われた遊園地(中)

大森かおり

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3 隠し部屋

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「ちょっとー、待ってってばー」
 京一の速さについていけず、息を切らしながら、柚子が言った。
 そしてさきほど、京一がらくらくとびこえていった、コーヒーカップの乗り物を前にして、一瞬たじろいだ。しかし、なんとかコーヒーカップのふちをつかみ、力を最大限にして、腹を圧迫させながらも、コーヒーカップの中に入ることに成功した。悪戦苦闘しながらだったが、障害物をのりこえ、京一に続き、柚子も前に進んでいった。
 その時、すでに京一は、人影がいると思われる、大道具がある場所に、まわりこんでいた。
「正体あらわせ! この飯泥棒!」
 刀を振り下ろしながら、京一が言った。
 しかし、犯人はなにも言わない。
「隠れてもムダだぞ」
 言いながら、京一はどんどん奥へと進んだ。
 京一が、なにかを言い終わるたびにやってくる、沈黙。その異様な静けさに、周囲に緊張が走った。柚子はすこしだけ遠くにいながらも、そう言った気配を感じとっていた。
「もう、待ってって言ったのに」
 やっと後ろから、ヘトヘトになった柚子がきて、言った。
「柚子、ここで止まるんだ。どうやら犯人は、すぐそこにいる」
 柚子を手で制止させながら、京一が注意した。
 京一に言われて歩みを止めた柚子は、犯人を見ようとして、前を向いた。
 すると、二人の目の前で、なにか黒くて大きな塊のようなものが、もぞもぞと動くのが見えた。なんだかとても奇妙な動きをしている。この塊は一体なんだと、柚子は目を見張った。
 しかしよく見ると、何者かが背中を向けて、床に座り込んでいるのだということがわかった。
 柚子はあまりの恐怖から、京一に寄り添って、顔をゆがめた。京一はというと、鋭い目で犯人をにらみつけていた。
 しばらく二人で犯人の動きを見ていると、犯人はゆっくりと、後ろを振り向いた。
 そして京一と柚子、犯人の目が合った瞬間、いきなり京一の顔が、ハッとした顔に変わった。
「お、お前は……!」
                 ♢♢♢
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