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3 隠し部屋
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「逃げたいなら、さきに陽菜ちゃんだけ逃げて」
陽菜はそう言われても、柚子を置いて逃げることなどできないようで、柚子からすこし離れたところで、戸惑いながらたたずみ、
「でも……」と言った。
そうして、柚子と陽菜が話している間に、とうとう大柄な少年は、柚子の目の前にきていて、手のひらを振り上げ出した。どうやら、柚子を殴ろうとしているようだ。
柚子はどうするか迷った。
自分もこの大柄な少年に、なにかお見舞いしてやりたい気分だったが、体格がはるかにちがうこの少年に、そんなことができるはずもない。
しかし、このまま引き下がるのも癪だ。
考えた末、仕方なく、おとなしく殴られる覚悟を決めた柚子は、目をつむって両手を顔の前にやり、防御の姿勢をとった。
「柚子ちゃん!」
陽菜が悲痛な声を上げた。
「へへっ、これで終わりだな」
大柄な少年が意地悪く言った。
「いくぞっ!」
やられる、と思った次の瞬間、バチーンという大きな音が鳴った。
ところが、不思議なことに痛くもなければ、なんの感触も感じなかった。
ゆっくりと目を開けて前を見ると、そこには柚子よりもすこし大きな、見覚えのある背中があった。
「京一……くん……?」
柚子が確認するように聞いた。
しかし、前にいる男の子は、なにも言わない。ただ大きく手を広げ、柚子を守ろうとしているだけだ。
「えっ⁉︎」
すこし間が空いてから、大柄な少年が目を見開き、動揺しながら男の子に向かって言った。
「お前っ、誰だよ」
「うるせー」
男の子はそれだけいうと、後ろを振り返った。
陽菜はそう言われても、柚子を置いて逃げることなどできないようで、柚子からすこし離れたところで、戸惑いながらたたずみ、
「でも……」と言った。
そうして、柚子と陽菜が話している間に、とうとう大柄な少年は、柚子の目の前にきていて、手のひらを振り上げ出した。どうやら、柚子を殴ろうとしているようだ。
柚子はどうするか迷った。
自分もこの大柄な少年に、なにかお見舞いしてやりたい気分だったが、体格がはるかにちがうこの少年に、そんなことができるはずもない。
しかし、このまま引き下がるのも癪だ。
考えた末、仕方なく、おとなしく殴られる覚悟を決めた柚子は、目をつむって両手を顔の前にやり、防御の姿勢をとった。
「柚子ちゃん!」
陽菜が悲痛な声を上げた。
「へへっ、これで終わりだな」
大柄な少年が意地悪く言った。
「いくぞっ!」
やられる、と思った次の瞬間、バチーンという大きな音が鳴った。
ところが、不思議なことに痛くもなければ、なんの感触も感じなかった。
ゆっくりと目を開けて前を見ると、そこには柚子よりもすこし大きな、見覚えのある背中があった。
「京一……くん……?」
柚子が確認するように聞いた。
しかし、前にいる男の子は、なにも言わない。ただ大きく手を広げ、柚子を守ろうとしているだけだ。
「えっ⁉︎」
すこし間が空いてから、大柄な少年が目を見開き、動揺しながら男の子に向かって言った。
「お前っ、誰だよ」
「うるせー」
男の子はそれだけいうと、後ろを振り返った。
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