79 / 244
2 不審人物
21
しおりを挟む
「じゃあなんで?」
ルーカスは、不思議そうな顔をしている。
「なんでもないわよ。それに、たとえそうだったとしても、小さな子供には、まだわからないことです。だから話しませーん」
乙葉はルーカスに負けじと、茶化すように言った。
本当は、京一と柚子が二人きりでいることが、気になって仕方ないのだけど、ルーカスに知られたくはない。だから乙葉はそのことについて、かたくなに口を閉じることにした。
「えっ!」
急に子供扱いをされたルーカスは、あからさまに、ショックを受けたような顔をした。
「なにそれ! 乙葉だって、まだ子供じゃん!」
「ルーカスよりは大人です」
澄ましたように乙葉が言った。
「さ、犯人探しのつづきをしましょ」
理由を話そうとしない乙葉に、ルーカスは怒り、まるで風船のように思いきり頬をふくらませて見せた。しかし乙葉はかまわず、周囲を見渡して人影を探した。
するとルーカスが、突然、
「そんなこと言うなら、もうあれ、見せてあげない」と言った。
「あれ?」
けげんに思った乙葉が言った。
「そう、あれ」
ルーカスは意味深い目つきをして言った。
「残念だなー。あれを見せるために、僕はわざわざ、乙葉と二人だけになったのに」
「なにそれ」
不満のある顔をしながら、乙葉が言った。
「そんなこと言われたら、よけいに気になるじゃない」
「ふふふっ」
両手で口を押さえながら、ルーカスが楽しそうに笑った。
「でしょー?」
もったいぶって、中々教えようとしないルーカスを前に、乙葉はだんだんと苛々してきていた。
そんな乙葉の様子には気づかないルーカスが、
「でも、乙葉がそういう態度をとるなら、僕、もう見せる気がなくなっちゃった。乙葉にだったら、特別に見せてあげようと思ってたのにな」と、乙葉から顔をそむけ、素っ気なく言った。
それを聞いた乙葉が、なにも言わないでいると、どうするのかというように、ルーカスが乙葉の様子を、ちらりと見た。
乙葉は考えた。ルーカスのいう、あれとはなんなのか、まったく想像もつかない。しかし、この遊園地にある、特別な何かであることは、たしかだ。
一瞬、迷った乙葉は、
「もう、わかったわよ!」と、突然、声を張り上げた。
そして、バツが悪そうな顔をして、
「ごめん、謝るから許して——」と言った。
そう言うと、ルーカスはニヤッと口角を上げた。
そして即座に、顔をパッと明るくさせて、
「いいよ!」と、乙葉を見て言った。
乙葉はすこし納得がいかない気持ちになっていたけれど、ルーカスのいうあれを見たいがために、我慢することにした。
「じゃあいまから、この世で僕だけしか知らない、この遊園地にある、特別な場所に連れていってあげる」
ルーカスは、不思議そうな顔をしている。
「なんでもないわよ。それに、たとえそうだったとしても、小さな子供には、まだわからないことです。だから話しませーん」
乙葉はルーカスに負けじと、茶化すように言った。
本当は、京一と柚子が二人きりでいることが、気になって仕方ないのだけど、ルーカスに知られたくはない。だから乙葉はそのことについて、かたくなに口を閉じることにした。
「えっ!」
急に子供扱いをされたルーカスは、あからさまに、ショックを受けたような顔をした。
「なにそれ! 乙葉だって、まだ子供じゃん!」
「ルーカスよりは大人です」
澄ましたように乙葉が言った。
「さ、犯人探しのつづきをしましょ」
理由を話そうとしない乙葉に、ルーカスは怒り、まるで風船のように思いきり頬をふくらませて見せた。しかし乙葉はかまわず、周囲を見渡して人影を探した。
するとルーカスが、突然、
「そんなこと言うなら、もうあれ、見せてあげない」と言った。
「あれ?」
けげんに思った乙葉が言った。
「そう、あれ」
ルーカスは意味深い目つきをして言った。
「残念だなー。あれを見せるために、僕はわざわざ、乙葉と二人だけになったのに」
「なにそれ」
不満のある顔をしながら、乙葉が言った。
「そんなこと言われたら、よけいに気になるじゃない」
「ふふふっ」
両手で口を押さえながら、ルーカスが楽しそうに笑った。
「でしょー?」
もったいぶって、中々教えようとしないルーカスを前に、乙葉はだんだんと苛々してきていた。
そんな乙葉の様子には気づかないルーカスが、
「でも、乙葉がそういう態度をとるなら、僕、もう見せる気がなくなっちゃった。乙葉にだったら、特別に見せてあげようと思ってたのにな」と、乙葉から顔をそむけ、素っ気なく言った。
それを聞いた乙葉が、なにも言わないでいると、どうするのかというように、ルーカスが乙葉の様子を、ちらりと見た。
乙葉は考えた。ルーカスのいう、あれとはなんなのか、まったく想像もつかない。しかし、この遊園地にある、特別な何かであることは、たしかだ。
一瞬、迷った乙葉は、
「もう、わかったわよ!」と、突然、声を張り上げた。
そして、バツが悪そうな顔をして、
「ごめん、謝るから許して——」と言った。
そう言うと、ルーカスはニヤッと口角を上げた。
そして即座に、顔をパッと明るくさせて、
「いいよ!」と、乙葉を見て言った。
乙葉はすこし納得がいかない気持ちになっていたけれど、ルーカスのいうあれを見たいがために、我慢することにした。
「じゃあいまから、この世で僕だけしか知らない、この遊園地にある、特別な場所に連れていってあげる」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。
桐山一茶
児童書・童話
雨が降り注ぐ夜の山に、捨てられてしまった双子の姉妹が居ました。
山の中には恐ろしい魔物が出るので、幼い少女の力では山の中で生きていく事なんか出来ません。
そんな中、双子姉妹の目の前に全身黒ずくめの女の人が現れました。
するとその人は優しい声で言いました。
「私は目が見えません。だから手を繋ぎましょう」
その言葉をきっかけに、3人は仲良く暮らし始めたそうなのですが――。
(この作品はほぼ毎日更新です)
夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~
世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。
友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。
ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。
だが、彼らはまだ知らなかった。
ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。
敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。
果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか?
8月中、ほぼ毎日更新予定です。
(※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
鎌倉西小学校ミステリー倶楽部
澤田慎梧
児童書・童話
【「鎌倉猫ヶ丘小ミステリー倶楽部」に改題して、アルファポリスきずな文庫より好評発売中!】
https://kizuna.alphapolis.co.jp/book/11230
【「第1回きずな児童書大賞」にて、「謎解きユニーク探偵賞」を受賞】
市立「鎌倉西小学校」には不思議な部活がある。その名も「ミステリー倶楽部」。なんでも、「学校の怪談」の正体を、鮮やかに解明してくれるのだとか……。
学校の中で怪奇現象を目撃したら、ぜひとも「ミステリー倶楽部」に相談することをオススメする。
案外、つまらない勘違いが原因かもしれないから。
……本物の「お化け」や「妖怪」が出てくる前に、相談しに行こう。
※本作品は小学校高学年以上を想定しています。作中の漢字には、ふりがなが多く振ってあります。
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
※本作品は、三人の主人公を描いた連作短編です。誰を主軸にするかで、ジャンルが少し変化します。
※カクヨムさんにも投稿しています(初出:2020年8月1日)

共に生きるため
Emi 松原
児童書・童話
高校生の時に書いた初の長編作品です。
妖精もののファンタジーです。小学生の少女はとある妖精と出会い、妖精の国に行きます。
そこで起こるドタバタな出来事を書いています。

すぐケガしちゃう校長先生を止める話
青西瓜(伊藤テル)
児童書・童話
この小学校の生徒会長には大切な仕事があった。
それは校長先生を守ること。
校長先生は少し特殊な個性や能力を持っていて、さらにそれを使ってすぐケガしちゃうし、大声で泣いてしまうのだ。
だから生徒会長は校長先生のお守りをしないといけないのだ。
それを補助してくれるはずの生徒副会長の桜さんも天然ボケがすごい人で、今日も今日とてハチャメチャだ。
これは僕と校長先生と桜さんの話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる