ルーカスと呪われた遊園地（中）

２ 不審人物

１９

　柚子は首をかしげた。
「そいつら以外に誰がいる？」
　遠くを見つめながら、京一が言った。
「ルーカスは、とくに心配だ」
「でも、さっきルーカスは、厨房で一生懸命探していたし、大丈夫だと思うわよ」
　京一を安心させるために、柚子が明るく言った。
「そうか」
　まだ不安そうにしながら、京一は柚子を見た。
「乙葉も乙葉で、ルーカスと一緒になって遊んでいないといいけどな」
　姉の名前が出た瞬間、柚子の笑顔は、たちまちムッとした顔に変わった。
「お姉ちゃんのこと、気になるの？」
「いや、別に？」
　京一はなんでもないような顔をした。
「うそ、絶対気にしてる」
　もはや京一にどう思われようとかまわずに、柚子が反論した。
「京一くんはさ、お姉ちゃんのこと、正直どう思ってるの？」
　突飛な質問をされた京一は、おどろいたような顔をして柚子を見た。
「どうって、ただの幼なじみに決まってるじゃないか」
「本当にそれだけ？」
　京一の顔をじっと見つめながら、疑い深く柚子が聞いた。
「それだけだ」
　柚子から目をそらして、京一が言った。
「ふーん」
　なんだか納得がいかない答えだと思いながら、柚子が言った。
「なんだよ」
　チラッと柚子を見て、京一が言った。
「ただの幼なじみなのに、こんなところまで、助けにきたりするのね」
　柚子はボソッと呟いた。
「え？」
　柚子が言っていることが聞き取れなかったのか、京一がとっさに聞き返した。
「ううん、別に」
　素っ気なく柚子が言った。
　本当は、乙葉のことについて、京一にいうつもりはなかった。でも、ついうっかり、口をついて出てしまった。
　そのことについて、彼女でもないのに、京一にうっとうしがられたかもしれないと思い、柚子はしばらく反省しながら歩いた。

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