ルーカスと呪われた遊園地(中)

大森かおり

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2 不審人物

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 乙葉はもう、この遊園地にきて、四日目になるというのに、まだ一度も、カフェの中に入ったことがなかった。
「もしかしたら、ここに鍵があるかもしれないわね」
 期待して乙葉が言った。
「いや、俺は一度、この中を隅々まで探したが、なにもなかった」
 はっきりと京一が言った。
「いつの間に……」
 乙葉の知らない間に、京一がこの遊園地を、広い範囲で調べていることにおどろき、乙葉はつい、声をもらした。
「いや、お前なあ、そもそも、南側を探すのは、乙葉たちの役目だったはずだぞ。それなのに、どうしてまだ、ここを探していなかったんだ?」
 京一にそう言われた乙葉は、図星をさされ、思わずギクりとした。
「あー、それはその、見落としていたというか、なんというか……」
「もういいよ、まったく」
 うろたえる乙葉をよそに、京一は、うんざりしたように言った。
「それより、はやく中に入ろう」
 京一は、正面にある入口の前まで歩くと、ガラス扉を開け、おくせず、カフェの中に入っていった。続いてルーカスが、まるで自分の家に入るかのように、気楽な感じで、京一の後ろを飛んでいった。またその後ろを、京一がいるから、なにがあっても大丈夫だと、安心しきっている乙葉が、初めて入るカフェの中は、どんな感じだろう、と興味津々の様子で、入っていった。たいしてその横では、犯人が、まだどこかにいるのではないかと、すこし警戒気味の柚子が、一歩後ろに下がり、乙葉の腕を、不安そうに掴んで歩いていた。
 入って早々、乙葉は、顔を輝かせて歩きながら、全体を見回した。
 ホールには、木製のテーブルと、椅子がいくつか置かれていて、奥に厨房がある。当然、従業員も、客もいないからなのか、殺風景だった。
 中を見ることを楽しみにしていた乙葉は、すこし残念に思った。それは、よくあるカフェの光景だったという理由もあるけれど、実際に使われていないからなのか、なんだか妙に、物寂しさを感じたからだ。
 そのためか、これまでのわくわくした乙葉の顔は、一変して、一気にがっかりした顔になった。
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