ルーカスと呪われた遊園地（中）

２ 不審人物

１

　ゴーカートでの事件のあと、京一の言うとおり、天気は次第に大雨となった。
　乙葉たちは雨が止むまで、小屋から一歩も出ずに、引きこもっていた。そして小屋にいる間は、各々が自由にして過ごした。
　みんながその時、なにをしていたのかというと、京一はまた、『遭難した時のための本』を椅子に座って、しずかに読みふけっていたし、その側では、真剣な顔をして向き合っていた柚子とルーカスが、床に腰を下ろして、トランプのババ抜きを楽しんでいた。
　さらに、その三人から離れるようにして、小屋の隅のあまり目立たない場所で、久遠が一人、トレーニングをしていた。久遠は険しい表情をしながら、黙々と腹筋を行っている。ケガをしているからか、なるべく足を使わないトレーニングを、選んでやっているようだった。強くなりたいという、久遠の切実な思いは、まだまだ消えてはいないみたいだ。
　そして最後。窓際に、椅子を置いて座っていた乙葉は、そんな四人をひっそりと眺めながら、一人、物思いにふけるように、スマホでお気に入りの音楽を聴いていた。
　やがて、雨は徐々に止み出し、空から光が降りてきたため、乙葉と柚子は、かねてから予定していた“噴水のお風呂”に入ることに決めた。
　乙葉はその準備が終わってから、京一たちに、『お風呂に入っている間は、絶対に小屋から出ないこと』を、いつものように約束させた。
　小屋から歩いて噴水の広場まで到着すると、二人は早速、服をすべて脱ぎ捨て、裸になった。そして、勢いよく噴水の中に飛び込んだ。すると水しぶきが高く上がり、二人の頭上に、シャワーのようになって降りそそいできた。
「冷つめたーい！」
　柚子は身震いしたあと、顔をしかめながら、自分の体を温めるように、両肩を手で掴んだ。しかし、すぐにパッと明るい顔になり、両手を上げた。
「けど、気持ちいい！」
　乙葉も、柚子に負けず劣おとらず、明るい顔になって、
「最高！」と言った。
　二人で噴水に入ってはしゃいでいることが、乙葉にはなんだか、すごくおもしろく感じ、柚子と顔を見合って、どっと笑った。