ルーカスと呪われた遊園地(中)

大森かおり

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1 絶対絶命ゴーカート

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「はい」
 そう言うと、久遠はいきなり、神妙な面持ちになった。
「僕、実は乙葉さんのことが——す——」
「——す?」
 顔をしかめながら、乙葉が言った。
「す——」
「す……?」
 久遠がまた、おなじことを繰り返して言ったため、乙葉はもどかしい気持ちにかられた。
 二人は、真剣に見つめ合っている。
 そして極度の緊張からか、張り詰めた空気が、小屋中を包んだ。そのせいか、久遠は体を微妙に震えさせながら、喉を一瞬、ゴクッと鳴らした。
 これから久遠がなにを言うのか、乙葉には予想もつかなかったが、とにかくなにか重要なことを言おうとしている、ということだけはわかった。
 久遠は額に汗をかきながら瞳孔どうこうを開き、決死の表情で、ふたたび、ゆっくりと重い口を開けた。
「すっ! すっ……ぃ」
「ただいまー」
 すべてを久遠が言い終わる前に、小屋のドアが、バタン、と勢いよく開き、京一たちが、中に入ってきた。それにより、これまでの重い空気は、一気に消え失せた。
「みんな! おかえり!」
 乙葉は久遠が言おうとしていたことなど、すっかりと頭から抜け落ち、待ってましたとばかりに、みんなを温かく迎え入れた。
 しかし、みんなが一斉に、焦っている久遠に注目しているのを見て、なにがあったかを断片的に思い出した。
「あ……そうだわ、ごめん、久遠くん。それで、なんの話をしていたんだっけ?」
 乙葉が尋ねた。
「い、いや、やっぱり、なんでもありません! あはは」
 ほかのみんなが戻ってきたことで言いづらくなったのか、久遠が笑いながら言った。
 それで乙葉が、
「え、いいの?」と聞いても、久遠は、さきほど言おうとしていた話の続きを、決して、乙葉に話そうとはしなかった。
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