ルーカスと呪われた遊園地（中）

１ 絶対絶命ゴーカート

５３

「だって、みんなと楽しみたかったし——」
「まあ、みんなと楽しみたかっただなんて、そんな……」
　乙葉はこの時、なんていじらしいのだろうと思いながら、ルーカスを見た。
　おこられるかもしれないのに、それをわかっていながら、リスクをとってまで、鍵を隠したルーカス。
　そこまでして、みんなと乗りたかったのだと思うと、乙葉はルーカスを、とても叱る気にはなれなかった。
「もうおこった。今日という今日はみっちり叱って……」
　腕まくりをしながら、京一が言った。
「まあまあ京一くん！」
　京一がおこりながら、ルーカスに近づこうとしているのを、柚子が走り寄って、必死で制止した。
「それで、鍵はどこにあるの？」
　気づいたように乙葉が言った。
「ここ……」
　ルーカスは、自分の着ている、狼の着ぐるみのポケットの中から、おずおずと鍵をとり出した。その鍵は赤色で、これまでとおなじく、全部で十本あった。
　ここで、乙葉はピンときた。
　建物で探していた際に、ルーカスが、一人でこそこそしていた原因はこれか、と乙葉は思い出しながら納得した。
　しかし、そのことはもう、きれいさっぱり水に流すことにした。
「すごい！　本当だわ！」
　乙葉は鍵が見つかったことを素直によろこび、ルーカスに向かって言った。
「あなた、えらいわよ、ルーカス」
　それを聞いたルーカスは、不思議そうな目で乙葉を見ると、
「え？　僕のこと、おこらないの？」と言った。
「もちろんよ」
　明るい表情をしながら、乙葉が言った。
「いうのがちょっと遅れただけで、ルーカスはちゃんと、鍵を見つけてくれたんだもの。おこるわけないわ。むしろ、感謝したいくらいよ」