ルーカスと呪われた遊園地（中）

１ 絶対絶命ゴーカート

４５

「もうっ、こうなったら仕方ないわ！　命の方が大事よ」
　まるでやけになったように見えるが、決死の覚悟だった。
　しかし、久遠はそんな乙葉を、情緒不安定になったのではないか、というような、困惑した目で見た。
「一緒に飛び降りましょう！　久遠くん！」
　乙葉は真剣な目で、久遠を見ながら言った。
「は、はいっ」
　うろたえながら久遠が言った。
「じゃあいくわよ！」
　二人は体をコースの方に向けて、飛び降りる体勢になった。
「せーのっ」
　乙葉の合図により、乙葉と久遠は、同時にカートから飛び降りた。二人の体は、コンクリートの上に強く叩きつけられ、何度も回転し、坂の下まで転げ落ちていく。
「乙葉！」
　すでにカートを、コース脇に止め、カートからおりていた京一が、乙葉の元へ、真っ先に助けに走った。
「ルーカス！　久遠を頼む！」
　走りながら、一度も後ろを振りかえらずに、京一が大きな声で言った。
　その時、まだカートに乗ったままだったルーカスは、
「うん！」というと、空中を飛んでカートから離れ、久遠の元へと急いだ。
　この間に、カートは坂の頂上まで、一直線に到達し、そのまま巨大な穴に向かって落下していった。すると、大きな爆発音がした。穴の下の地面に落ちた衝撃で、カートが爆発したのだろうか。
　転げ落ちていた乙葉は、途中で京一に抱き止められ、大事にいたらずにすんだ。
「おい、乙葉！」
　珍しく取り乱した京一が、静かに目をつむっている乙葉の名を呼んだ。
　そしてその場に跪ひざまずきながら、乙葉を抱きかかえた。まもなくして、乙葉はゆっくりと目を開けて、京一を見た。
「京一……」
「大丈夫か？」