ルーカスと呪われた遊園地(中)

大森かおり

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1 絶対絶命ゴーカート

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「あー……」
 乙葉と久遠は、みるみる顔面蒼白になった。
「久遠くん! 止めて!」
 すぐに、事態を理解した乙葉が言った。
「ダ、ダメです! さっきからブレーキを、何度も強く踏んでいるんですが、全く止まってくれません!」
 実際、久遠は何度もブレーキを踏んでいた。しかし、久遠の言うとおり、カートは原因不明の、制御不能な状態になっていた。
「そんな……」
 言っている間に、カートは勝手に、どんどん坂の上へとのぼっていく。あと数十メートル走れば、坂の頂上にたどり着いてしまう。二人はあの巨大な穴と、とても近い距離にいた。
「二人とも、はやくカートから飛びおりるんだ!」
 京一が叫んだ。
「まあっ、カートからですって? そんなこといきなり言われても……」
 乙葉は躊躇ちゅうちょした。もし、このままカートから飛びおりたら、命は助かるだろう。しかし、コンクリートの上はとても硬そうで、速度もかなり速い。その上、坂の上ときた。きっと転げ落ちて、傷だらけになってしまうにちがいない。想像するだけで痛そうだと思い、乙葉は顔をしかめた。
 ここから飛びおりるには、かなりの勇気が必要だ——でも、もう考えている時間なんてない。こうしている間にも、カートはものすごい勢いで進んでいる。それに頂上はもう、数メートル先に迫ってきている。
「飛びおりるしかないのかしら……」
 うつむきながら、重い表情で乙葉が言った。
「乙葉さん、大丈夫ですか? 飛びおりられますか?」
 久遠が言った。
 こんな時でも、久遠は乙葉の心配をし、顔色をうかがっている。しかし、言葉とは裏腹に、久遠の手足は小刻みに震えていた。本当は自分もこわいのに、乙葉のことを気遣っている。乙葉はそんな久遠を、頼もしく思った。
「ええ、なんとか、大丈夫よ」
 乙葉は無理に笑顔を作った。
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