ルーカスと呪われた遊園地（中）

１ 絶対絶命ゴーカート

３０

　すると、震えていると思ったら、すぐに真剣な様子に変わった。
　ついには、両手を前に出し、一度ひねって指と指を組み、下から手前にまわしたかと思うと、組んだ手の中をのぞきこんでいた。まるでその様子は、グッパーで出す手を占っているかのようだった。
「柚子、あなた、そんなに一人で乗るのがいやなの？」
　若干、引き気味に乙葉が言った。
「う、うるさいわね。別にいいでしょ」
　怒ったように柚子が言った。
　逆に、京一は柚子とはちがい、落ち着き払っていた。ルーカスはどっちでもいいというように、のんきに空中を、ふわふわと浮かんでいる。
　まもなくして、ようやく準備が整ったのか、柚子がグッパーをする体勢になった。緊張している様子だ。
　これだけ必死な柚子を見たあとだと、なぜかなにも関係のない乙葉までもが、緊張するハメになってしまった。
　そうして、柚子がもたらした緊迫したムードの中、京一とルーカスも手を出した。
　柚子は一度、深呼吸をした。
　そしてようやく、
「グッとパーでわかれましょ！」と言った。
　京一とルーカスがグーを出し、柚子一人がパーを出した。
　その様子を見た乙葉は、
「あっちゃー」と言って、額を手で押さえた。
　柚子は、一人になったことがよほど悲しいのか、ショックを隠し切れないでいるようだ。
　あれだけ一人で乗ることをいやがっていたのに、災難だな、と他人事のように乙葉は思った。
　そんな柚子をよそに、
「やったー！　京一と一緒」と、ルーカスは大喜びしていた。
「ルーカス、それはいいけど、ちゃんと鍵を探せよ？」
　京一はルーカスとペアになったことで、柚子とはちがい、一人でカートに乗るかどうかということよりも、ルーカスがまじめに鍵を探す気があるのかという、そっちの方の心配をしているようだった。
「わかってるよー」